タンパク質が吸着しない微小デバイスで生体ナノマシンの動きを操る

芸術工学研究院
井上 大介 助教

ダブルポリマー処理したマイクロ流体でデバイスが微小管の動きを高効率に制御

ポイント

・光で固まるレジン「NOA」を使って、簡便な方法でマイクロ流体デバイスを作成
・2種類のポリマーでデバイス表面を処理、NOA表面へのタンパク質吸着を抑制する技術を開発
・このデバイスを用いて、生体ナノマシンの動きを高効率に制御することに成功

概要

 九州大学大学院芸術工学研究院の井上大介助教は、簡便な手法でマイクロ流体デバイスを作成し、その材料表面の改質を行うことで、効果的にタンパク質製ナノマシンの運動を制御することに成功しました。
 繊維状タンパク質の微小管1は、キネシンというモータータンパク質によって動く生体材料です。微小管は直径が髪の毛の約4000分の1という極小サイズでありながら、強力な力を生み出すため、生体ナノマシンとしてナノテクノロジーの分野で非常に注目されています。この特性を利用して、微小物質の輸送や感知、分離など、人間が製造する機械では実現できない機能を提供することが可能です。しかし、微小管はランダムな方向に動いてしまうため、これを技術応用するにはその動きを制御する必要があります。
 これまで、微小管の動きを制御するためにマイクロ流体デバイスが使われてきましたが、その作成には高度な装置や技術が必要でした。今回の研究では、紫外線で固まるレジン(NOA)を用いることで、簡単にマイクロ流体デバイスを作成できる方法が開発されました。しかし、NOA製のマイクロ流体デバイスの表面には、微小管を動かすキネシンが非特異的に吸着してしまい、微小管が流路壁を登ってしまうため、その動きが流路形状により制御できない問題がありました。
 そこで、NOAの表面を2種類のポリマーで不活化処理し、キネシンの吸着を防ぐ手法が導入されました。NOA表面の不活化処理により、微小管はデバイスの壁を登らず、流路に沿った動きをほぼ完全に制御できることが明らかになりました。この技術により、微小管を利用したナノテクノロジーの応用範囲がさらに広がると期待されます。また、今後はこの技術を使って、他の細胞や材料を制御する新たなデバイスの開発も視野に入れています。
 本研究成果は、2024年9月4日(現地時間)にアメリカ化学会発行 Nano Letters 誌に掲載されました。

用語解説

1. 微小管: 微小管は構成材料であるαβ-チューブリンというタンパク質が連なってできる直径25 ナノメートル、長さ約数十マイクロメートルの中空状の生体繊維。細胞内の物質輸送のレールとしてだけでなく、細胞の形態維持や染色体分離、繊毛運動など、細胞内で様々な役割を果たしている。

お問い合わせ先

芸術工学研究院 井上大介 助教

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