慢性腎不全の原因物質を効率的に体内から除去する吸着材を発見

工学研究院
藤ヶ谷 剛彦 教授

慢性腎不全治療の負担軽減に期待

ポイント

・慢性腎不全の進行を遅延させるため、大量の医療用活性炭を服薬し、原因物質を腸管内で吸着除去する処置が行われているが、患者の負担が大きいのが課題となっていた。
・本研究により服薬量を3分の1に低減できる新しい炭素吸着剤の開発に成功した。
・患者の負担が軽減できることで継続的な服薬を可能にし、慢性腎不全の進行遅延が期待できる。

概要

 慢性腎不全はわが国の成人の8人に1人が発症する国民病とされている。ある程度進行すると症状が急激に悪化し、人工透析生活を余儀なくされる。しかし、人工透析は患者の肉体的・精神的負担が大きいため、慢性腎不全の進行を遅延させることは患者にとって極めて重要である。現在、進行遅延の方法の一つとしてインドールなどの尿毒症毒素前駆体を医療用の活性炭により吸着除去する処置がなされている。しかし、既存の医療用活性炭はアミノ酸やビタミンなどの必要物質も吸着除去してしまう選択性の低さもあり、1日6gもの大量の服用が必要で、患者の負担が大きいことが課題であった。
 九州大学大学院工学研究院の藤ヶ谷剛彦教授、加藤幸一郎准教授、田中直樹助教および工学府博士課程3年のA.B.M. Nazmul Islam氏、同修士2年(当時)の赤峰麻衣氏らの研究グループは、選択性の低さは、従来の吸着材に空いている穴の大きさがバラバラであることに原因があると考え、メソポーラスカーボンと呼ばれる決まったサイズの穴を持つ炭素材料に着目した。メソポーラスカーボンのインドールの吸着選択性を調べたところ、様々なアミノ酸が混在する環境において市販の吸着剤と比較し3倍ものインドールの吸着選択性を有することを発見した。
 今回の発見は、服薬量を減らせることを意味し、患者の服薬負担を軽減できることにつながる。服薬負担が軽減できるため、患者が継続して服薬することが可能になり、慢性腎不全の進行遅延に役立つことが期待される。
 本研究成果は炭素材料学会が発行する国際学術誌「Carbon Reports」に2024年7月22日(月)(日本時間)にオンライン掲載された。

研究者からひとこと

 今回の発見はまだフラスコの中での実験結果であるため、現在動物を使った実験を計画しています。実際に効果を発揮し、慢性腎不全患者が服用できるようになることを目指して研究を継続します。

お問い合わせ先

工学研究院 藤ヶ谷 剛彦 教授

詳細

本研究の詳細はこちらをご参照ください。

ミトコンドリアの品質を維持する薬が糖尿病や脂肪肝を改善させる

【8/3開催】九大フィル オープンキャンパスコンサート

関連記事

  1. 亜鉛イオンが⼼筋の収縮⼒を⾼める機構を解明

    ~慢性⼼不全の急性増悪に対する新たな強⼼薬開発へ期待~ポイント・…

  2. 第104回アジア・オセアニア研究教育機構(Q-A…

    九州大学 基幹教育院 下中村 武 助教九州大学アジア・オセアニア研究教…

  3. 【6/22開催!】第94回サイエンスカフェ@ふく…

    ナノ医薬とは何か!~工学部で医薬品開発~  「サイエンスカフェ@ふ…

  4. 新たなC-スルホン化反応とプロスタサイクリン拮抗…

    ~免疫と酸化ストレス制御に関わる新たな代謝機構発見と新たな医薬品開発に期待~…

  5. 新型コロナウイルス排出と粘膜抗体の関係を解明

    ~呼吸器ウイルスのヒト間伝播を制御・予防する第一歩~ポイント…

  6. 《3/19開催》第181回アジア・オセアニア研究…

    松島 綾美 教授(理学研究院 化学部門)九州大学アジア・オセアニア研…

  7. 2021年度 九州大学病院がんセンター 市民公開…

    がんとどう向き合うか一緒に考えてみませんか九州大学病院は、都道府県が…

  8. 【作品募集8/1~】SDGs デザインインターナ…

    「未来の食文化」をデザインしよう!九州大学大学院芸術工学研究院が…