スマホゲームの遊びすぎ防止効果を8万人で検証

~数秒の待ち時間と視覚刺激の低減が、ゲーム依存対策に有効である可能性が示唆~

システム情報科学研究院
中村 優吾 助教

ポイント

・スマホゲームの遊びすぎ防止効果を世界8万人規模の実データで初めて大規模に検証
・「数秒の待ち時間」と「画面のグレースケール化」という2つのシンプルなデザイン介入を比較
・両者の併用により、プレイ時間が最大30.8%、継続率が40.4%低下し、より強い抑制効果を発見
・ゲーム側に“やさしいブレーキ”を内蔵することで、強制せず自然に遊びすぎを防げる可能性を提示

概要

近年、スマートフォンゲームは世界中で楽しまれる一方、長時間プレイによる健康への影響や、特に若年層におけるゲーム依存が大きな社会問題となっています。しかし、ユーザーが自然に遊びすぎを抑えられる仕組みについては、これまで明確な手法が確立されていませんでした。

こうした課題に対し、九州大学の研究グループは「ゲームに数秒の待ち時間(ロード遅延)※1を挿入する」「画面をグレースケール化※2する」といったシンプルなデザイン変更が、ユーザーの遊びすぎを抑える効果を持つことを明らかにしました。特に両者を組み合わせた場合、1日の平均プレイ時間が最大30.8%、継続率が最大40.4%低下することが示されました。

本研究は、九州大学大学院システム情報科学研究院の中村優吾 助教(責任著者)、高尾亮太 氏、福嶋政期 准教授、荒川豊 教授らによるものです。研究チームは、世界的に人気のスマートフォンゲーム「Flying Gorilla」を用い、84,325名のプレイヤーを対象に、画面表示や待ち時間をランダムに変更する1か月間の大規模実験を実施しました。その結果、グレースケール画面と10秒の待ち時間を組み合わせた条件が最も強い抑制効果を示しました。

さらに本研究は、こうした仕組みを“ゲームそのもののデザインに内蔵する”ことで、より自然で持続的な遊び方を実現できることを示唆しています。従来のスマートフォン依存対策の多くは、OSや外部アプリによる利用制限に頼っており、ゲーム体験と乖離した制御となるため、十分な効果が得られないケースがありました。本研究の成果は、ゲーム内インタラクションの工夫によってユーザー体験を損なわずに自然な離脱を促す、新たなデザイン原則を提示しています。開発者にとっては、「遊びやすさ」と「遊びすぎ防止」を両立させる健全なゲームデザインの実現に向けて、有望な方向性といえます。

今回の発見は、ゲーム依存という世界的な健康課題に対する予防策として有効であるだけでなく、スマホアプリ全般における「使いすぎを抑えるデザイン」への応用も期待できます。強制的な制限ではなく、アプリ側に“やさしいブレーキ”をあらかじめ組み込むことで、ユーザーが無理なく健康的な利用習慣を維持できる仕組みの実現につながります。

本研究成果は、アメリカ合衆国の雑誌「Proceedings of the ACM on Interactive, Mobile, Wearable and Ubiquitous Technologies」に2025年3月5日(月)(日本時間)に掲載されました。

研究者からひとこと

ゲームデザインに小さな工夫を加えるだけで行動が変わることを、定量的に示せた点に大きな意義があります。遊びすぎの課題に対し、ゲーム側からアプローチする新しい設計指針をさらに発展させていきたいと思います。私たちは日常でも、電車で電波が悪くなると自然とスマホ利用をやめたり、ふと休憩に入ったりする経験があります。今回の研究は、そうした“ちょっとした不便さ”が行動をやさしく調整する仕組みを、ゲームデザインの中に意図的かつ安全に取り入れられる可能性を示したと言えます。強制的な制限に頼らず、ユーザーの自律性を尊重しながら健全なプレイを促すための“やさしい介入”の実現に向けて、今後も研究を進めていきたいと考えています。  (中村 優吾)

用語解説

(※1) ロード時間
アプリ内で操作と操作の間に生じる読み込み時間。本研究ではこの待ち時間を意図的に数秒延長することで、プレイの区切りを自然につくり、遊び続ける衝動を和らげる効果を検証した。

(※2) グレースケール化(モノクロ化)
スマートフォンの画面表示から色彩をなくし、白黒の階調のみで表示する設定。視覚刺激を抑えることで没入感を軽減し、利用時間の抑制に寄与するとされる。

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システム情報科学研究院 中村優吾 助教

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