リボソームはニワトリ筋肉細胞の増殖を亢進する

〜細胞農業製品の効率的な産生に期待〜

基幹教育院
太田 訓正 教授

ポイント

・動物資源を培養技術によって製造する新たな技術の開発は、喫緊の社会的課題
・リボソーム(※1)が成長因子の分泌を亢進することを世界で初めて発見
・リボソームを細胞に導入することにより、培養肉を効率的に産生できることを期待

概要

九州大学基幹教育院/システム生命科学府の井上翔太大学院生、Anamika Datta大学院生、中山晋太郎大学院生、隆広聖大学院生、中條信成准教授、田村茂彦教授、太田訓正教授、ワシントン大学のArif Istiaq研究員、インテグリカルチャー株式会社(以下、インテグリカルチャー社)の川島一公博士の共同研究グループは、リボソームを細胞に取り込ませると、成長因子の分泌が促進し、ニワトリ筋肉細胞の増殖を亢進することを世界で初めて明らかにしました。

インテグリカルチャー社が開発している「CulNet System」は、細胞培養においてユーザーが簡単に利用できる自己持続型細胞培養環境の提供を目指しています。しかし、細胞農業における主要な課題の一つは、細胞培養に必要な成長因子や培養培地にかかるコストが高いことです。本研究で示したように、リボソームを取り込んだニワトリ筋肉細胞が細胞増殖を促進する成長因子を分泌することは、これらの課題を克服する新しい戦略となる可能性を示しています。今後、リボソームをCulNet Systemに組み込むことで、細胞が自己増殖を支える成長因子を生成する自己持続型培養環境が強化され、細胞農業の生産効率が向上し、生産コストの削減が期待できます。

本研究成果は、2025年6月1日(日)に科学雑誌「Journal of Developmental Biology」で公開されました。

用語解説

(※1) リボソーム
細胞内でタンパク質を合成する生体分子。

詳細

本研究の詳細はこちらをご参照ください。

お問合せ先

基幹教育院 太田訓正 教授

《7/11開催》Qst Lounge #6「環境毒性学入門」 ~ヒトと自然の共生を目指して~

《7/1-7/29開催》九州大学EUセンター(ジャン・モネCoE九州)市民講座2025『ヨーロッパ―その豊かさと現実/Europe―Its Fecundity and Reality』全4回(ハイブリッド開催)

関連記事

  1. 透過電子顕微鏡によるナノ粒子焼結を4次元で初計測…

    ~ ものづくりのDX化促進による開発コストの削減に期待 ~ ポイ…

  2. 生物の形作りのメカニズムをAIが画像から提案

    研究者が行ってきた発見的プロセスを基盤モデルが継承医学研究院三浦 岳…

  3. AIの思考を解き明かす!

    ~ニューラルネットワークの隠れたパターンを解明~システム情報科学研究院…

  4. 再生可能エネルギー連携フォーラム(エネルギーウィ…

    再生可能エネルギー連携フォーラム(エネルギーウィーク2022)九州大…

  5. 【学内向け募集(9/30締切)】Kyushu U…

    【学内向け募集(9/30締切)】Kyushu University Asia…

  6. クローバー会 第5回

    知っておきたい乳がんのお話がん患者さんとご家族にがんに関する情報を提…

  7. 慢性疼痛からの自然回復に必要な細胞を世界で初めて…

    ~ミクログリア細胞の驚くべき変化~ポイント・神経が傷つくと、非常…

  8. 「マス・フォア・インダストリ研究所の紹介」(第3…

    マス・フォア・インダストリ研究所教授 神山 直之九州大学アジア・…