土壌微生物バイオマスの新たな測定法を約40年ぶりに提案

農学研究院
平舘 俊太郎 教授

ポイント

・風乾土水抽出法による微生物バイオマス測定を国内各地の森林および草地土壌で検証
・風乾土WEOC量と従来法による微生物バイオマスの間には非常強い直線関係
・土壌理化学性に対する挙動も風乾土WEOCと微生物バイオマスで同一
・風乾土水抽出法により従来法を使用できないような環境でも土壌微生物バイオマスの測定が可能になる

概要

土壌中に微生物として存在している有機物の量(土壌微生物バイオマス)は、土壌の全有機炭素量注1の1%程度である一方、植物が利用可能な栄養成分の供給源として重要です。また、人為的な二酸化炭素(CO₂)排出量の約10倍に相当する土壌からのCO₂放出を左右する要因にもなっており、土壌微生物バイオマスの時空間変動把握は地球環境の将来変化を正確に予測するうえでも重要です。しかし、1970年代~90年代に確立された従来の土壌微生物バイオマス測定法では、劇物でもあるクロロホルムの利用が必要である他、採取後間もない新鮮な土壌を必要とするなど、地球規模の巨大データセット構築に向け多くの障壁が存在しています。

新潟大学自然科学系(農学部)の永野博彦助教、九州大学大学院農学研究院の平舘俊太郎教授、日本原子力研究開発機構の小嵐淳研究主席らの共同研究グループは、土壌学における土壌の標準的長期保管形態である乾燥土、特に室温で乾燥させた風乾土から水抽出で回収できる有機物を分析することで(風乾土水抽出法)、従来法と同様に微生物バイオマスを測定できることを発見しました。国内10地点の森林および草地で採取した土壌に従来法と風乾土水抽出法をそれぞれ適用したところ、従来法で測定した微生物バイオマスと風乾土水抽出法で得た水溶性有機炭素(風乾土WEOC)の土壌含有量との間には非常に強い直線関係が得られました。さらに各種土壌理化学性注2に対し、風乾土WEOC量は、微生物バイオマスが示す挙動とほぼ同一の挙動を示しました。本研究で提案された風乾土水抽出法を用いれば、新鮮な土壌が無くとも既存の風乾土試料を利用することで微生物バイオマスを推定できます。また、毒性物質を使用できないような環境でも土壌微生物バイオマスを測定できるため、土壌微生物バイオマスの大規模データセット構築が飛躍的に進む可能性があります。

本研究成果は、2025年4月23日、Springer Nature社の科学誌「Discover Soil」に掲載されました。

用語解説

(注1)土壌の全有機炭素量
土壌に存在する有機炭素の量は植物体存在量の3~4倍、大気存在量の2~3倍に達しており、陸域で最大の炭素プールとなっています。

(注2)土壌理化学性
土壌の様々な性質を特徴づける理化学的な要素であり、本研究では特にpH(酸性度)、電気伝導度(電気の伝わり易さ)、最大容水量(土壌の水分保持能力)、全炭素および窒素濃度、炭素および窒素の安定同位体比(土壌有機物の起源や分解程度などの指標)、可溶性有機炭素および窒素濃度(植物や土壌微生物が比較的利用し易い有機物量の指標)、活性金属成分濃度(土壌の火山灰性や炭素保護能力と関連)、およびCO₂放出能力(土壌微生物の活性と関連)を測定しました。

詳細

本研究の詳細はこちらをご参照ください。

お問合せ先

農学研究院 平舘俊太郎 教授

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