福島第一原発近くの小学校内に高濃度放射性セシウム含有微粒子が大量残留

~ 福島旧避難区域への安心できる帰還に向けて ~

ポイント

・福島の旧避難区域への帰還のためには、安全性に関する情報、特に建物内部におけるセシウムの分布と存在状態に関する情報をできる限り示す必要がある。
・原発に最も近い、現在閉鎖されている小学校の内部には高濃度放射性セシウム含有微粒子が最大で1平米あたり2400個以上残留していることを発見。
・今後、建物内部における高濃度放射性セシウム含有微粒子の分布を把握、理解した上でより安心できる帰還につながることを期待。

概要

 事故後12年経過し、除染等により環境中の放射能は大幅に低減してきたことから、帰還困難区域の一部解除が施行されてきています。現在残っている環境中の放射能は主に半減期が約30年のセシウム137によるもので、私たちの周辺や屋内においてその存在状態、分布を正しく知ることは、帰還をより安全なものにするために欠かせません。一方で通常は環境中に低い濃度で存在しているこの放射性セシウムが高濃度に濃集する直径数ミクロンの高濃度放射性セシウム含有微粒子(CsMP)がメルトダウンの時に大量に形成して、原発から環境中に放出されたことが分かってきました。PM2.5と同じで見えないほど小さく、局所的に高い放射能を放つことからその分布が懸念されていますが、特に屋内に流入した粒子や沈積した粒子の数は分かっておらず、その定量的計測法の開発と建物内部での存在量や分布の解明が望まれていました。
 九州大学大学院理学研究院の宇都宮聡准教授および理学府修士課程の笛田和希氏(研究当時)と小宮樹氏(研究当時)らの研究グループは、スタンフォード大学、ナント大学、ヘルシンキ大学、東工大、筑波大、国立極地研と共同で、福島第一原発から南西方向に約2.8 km離れた、事故後閉鎖されている小学校の建物内部を2016年に初めて調査して、独自で開発した手法を用いて廊下に残留する粉塵に含まれる高濃度放射性セシウム含有微粒子を定量することに成功しました。その結果、高濃度放射性セシウム含有微粒子が1平米から集められた粉塵中に2,400個以上含まれる場所、粉塵全体の放射能のうち約39%がその微粒子由来の場所が存在しました。一方で、建物の外では微粒子由来の放射能が全体の1.5%程度であることから、今回の結果は、事故時に放出されたセシウムの中に短い期間ですが多量の高放射性セシウム含有微粒子が含まれ、それらが建物の開閉状態によっては建物内部に流入して粉塵として残されることを示唆しています。今後は同様の手法を用いながら、帰還困難区域の建物内部にこの粒子がどの程度流入して、残留しているかを把握し、安心できる帰還につなげることが期待されます。
 本研究結果は、2023年4⽉8⽇にChemosphere誌に掲載されました。

用語解説

(※1) ベクレル(Bq)
放射能の単位。一秒間に崩壊する原子核の数。
(※2) 高濃度放射性セシウム含有微粒子(Cesium-rich microparticle, CsMP)
ケイ素、鉄、亜鉛、セシウム、酸素を主成分にもつ直径がサブミクロンから数ミクロン程度の微粒子。放射能は1ベクレル未満から数十ベクレル以上になるものもある。放射性のセシウム134とセシウム137の放射能比がおよそ1となり、原発内部のセシウムの放射能比と一致する。

詳細

詳細は九州大学プレスリリースをご参照ください。

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