世界初!蒸気に応答して広波長帯域の近赤外吸収を劇的に変化させる技術を開発

~アルコール蒸気で消去、水蒸気で書き込み可能な近赤外吸収スイッチ材料~

ポイント

1.これまで近赤外(NIR-II)領域に1,000 nmを超える連続的な超広帯域の近赤外吸収を与え、かつ、その消去と書き込みを温和な条件下、可逆的に行える物質は存在しなかった。
2.本研究で、1,000 nmを超える連続的な超広帯域近赤外吸収を与える一次元白金錯体と、そのフィルム化技術を開発し、近赤外吸収を可逆的にアルコール蒸気雰囲気下で消去、水蒸気雰囲気下で可逆的に書き込みすることに成功した。
3.アルコール蒸気雰囲気下で効率よく消去、水蒸気雰囲気下で再生できる分子暗号技術として、偽造防止などのセキュリティインク、スイッチングできる近赤外線吸収フィルタの製造、NIR-IIと可視吸収の双方を利用するセンサー技術等への幅広い応用が期待される。

概要

 眼に見えない波長780~2,500 nmの光は近赤外光と呼ばれ、多くの物質を透過することから、セキュリティインク(偽造防止)技術、光変調技術やイメージングをはじめとする幅広い応用がなされています。一方、より高度なセキュリティ技術やその社会実装へ展開するためには、分子レベルで設計され、幅広い近赤外吸収を可逆的にスイッチングできるインクやフィルム材料が求められています。蒸気に応答して色が変化するベイポクロミズムは、主に可視光領域において検討されてきましたが、超広帯域の近赤外吸収を可逆的にスイッチングできるフィルム材料はこれまで知られていませんでした。
 今回、九州大学大学院工学研究院の君塚信夫教授、森川全章助教、同大学大学院工学府永井邑樹大学院生らは、超広帯域の近赤外吸収を示し、かつ有機溶媒に可溶でフィルム化できる材料を開発し、近赤外吸収を可逆的にアルコール蒸気雰囲気下で消去、水蒸気雰囲気下で可逆的に書き込みすることのできる超広帯域の近赤外吸収ベイポクロミズム現象ならびに材料を発見しました。
 超広帯域の近赤外吸収は、一次元白金錯体とアニオン性脂質分子の精密複合化に基づいて、金属間相互作用を強め、バンドギャップを著しく小さくする同グループの独自技術に基づいて実現しています。一次元錯体/脂質複合体における結晶水は、一次元錯体鎖ならびに脂質分子の配列構造を安定化していますが、メタノール蒸気によって結晶水が追い出され、これに伴って錯体鎖と脂質の配列構造が大きく変化することによって、超広帯域の近赤外吸収が消失、可視光吸収特性も変化(藍色→赤色)しました。一方、水蒸気雰囲気下では可逆的に結晶水が形成され、近赤外(ならびに可視光)吸収が回復します。
 本材料は水蒸気に応答する「環境調和型」の近赤外光セキュリティ技術として応用が期待されます。
 本研究成果は、2022年1月4日(英国時間)に英国の国際学術誌「Chemical Communications」にオンライン掲載されました。

用語解説

*1) 揮発性有機化合物(VOC)
揮発性を有し、常温常圧で容易に気化する有機化合物の総称。濃度にもよるが、そのほとんどは人体に有害である。工業製品の製造過程で使用されることも多く、その排出や残留量に対して厳格な規制がなされている。
*2) 原子価間電荷移動吸収
多核金属錯体などにおいて、中心金属間での電荷移動に対応する光吸収。擬一次元ハロゲン架橋白金錯体においては、2 価の白金から 4 価の白金への原子価間電荷移動吸収が起こり、そのエネルギーはバンドギャップに対応することが知られている。一般に、白金間距離が短いほど、原子価間電荷移動吸収のエネルギー(吸収波長)は小さく(長く)なる。

詳細

九州大学プレスリリースをご参照ください。

九州大学大学院生物資源環境科学府 生命機能科学専攻 システム生物工学教育コース説明会 (2023年度入進学)

九州大学学術研究都市フォーラムin福岡

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