キノコの酸化酵素を用いた有用反応探索

〜カワラタケP450の潜在機能を迅速解明〜

農学研究院
一瀬 博文 准教授

ポイント

・キノコの多彩な生物機能を理解・利用するためには、P450(※1)の機能を迅速に同定する必要がある
・カワラタケP450の機能を準網羅的にライブラリ化することに成功した
・キノコ由来天然物の生合成機構解明や、医薬品・農薬の開発を加速すると期待される

概要

キノコ(担子菌)は薬理活性を示す天然物を産生したり、樹木や環境汚染物質を分解したりすることから、産業への応用が期待される微生物です。キノコがユニークな生物機能を発現する過程では、P450と呼ばれる酸化酵素が重要な役割を担います。一般的なキノコは100〜200種類のP450遺伝子を有しており、それぞれが異なる機能を発現します。しかしながら、遺伝子情報だけではP450の酵素機能を推定することすらできません。すなわち、キノコを利用したバイオテクノロジーにはP450機能を迅速かつ直接的に同定する技術が求められています。

今回、白色腐朽担子菌(※2)カワラタケに由来するP450を酵母に異種発現させることで、大規模なP450機能ライブラリを構築しました。機能ライブラリで標的基質の変換を行うことで、各々P450に備わる潜在機能を迅速に探索することが可能になりました。

国立大学法人九州大学大学院農学研究院の一瀬博文准教授らの研究グループは、カワラタケが有する全P450の約8割(145種類)を完全長cDNAとして獲得することに成功しました。さらに、酵母での異種発現を達成し、カワラタケP450を準網羅的にカバーする機能ライブラリを構築しています。機能ライブラリの活用例として、セスキテルペノイド(※3)生合成に重要な役割を果たすP450を世界で初めて同定しました。この発見によって、担子菌P450を利用した有用天然物の合成が加速すると期待されます。

今回完成させた機能ライブラリの応用性は高く、様々な化合物を標的基質として利用可能です。有機合成では困難な酸化反応を触媒するP450を発掘し、医薬品や農薬の合成プロセスで利用するなど、産業分野への貢献も期待されます。

本研究成果はエルゼビア社の学術雑誌「Enzyme and Microbial Technology」に2025年4月21日(月)に掲載されました。

研究者からひとこと

本研究を通して、担子菌P450の潜在機能を迅速かつ直接的に探索するための実験ツールが完成しました。P450機能ライブラリを活用して幅広い共同研究が実施されることを期待しています。 (一瀬博文)

用語解説

(※1)P450
酸化反応を触媒する酵素で、多くの生物が有している。

(※2)白色腐朽担子菌
木材を白色に腐朽させるキノコで、地球上には多種多様な種が存在する。

(※3)セスキテルペノイド
植物や微生物によって産生される天然物で、薬理活性を示すものも多い。

詳細

本研究の詳細はこちらをご参照ください。

お問合せ先

農学研究院 一瀬博文 准教授

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