反射を利用して、光を閉じ込める
工学研究院
松本光 助教
ポイント
・太陽光のエネルギーを化学エネルギーに変換できる光触媒(※1)を活用したモノづくりが求められていますが、既存の光反応器は光の吸収、透過、反射などを制御できず、反応効率が低いことが問題でした
・安価な高分子(※2)の粒子を充填した反応器を用いることで、粒子のスキマで光が幾度も反射する「光閉じ込め効果」が発現し、反応が加速することを世界で初めて発見しました
・本成果は、太陽光を直接利用した化学反応の実用化におけるボトルネックを乗り越え、SDGsに適った新しい次世代型モノづくりに貢献することが期待されます
概要
SDGsに適う次世代型のモノづくりを実現するため、クリーンで再生可能な太陽光を積極的に利用した化学反応の実現が必要不可欠です。太陽光エネルギーの半分は可視光が占めており、その可視光を効率的に利用するため、光触媒を用いた化学反応が積極的に開発されてきています。一方で、そのような光触媒反応では、反応器を通過した光が外へ逃げていくため、投入したエネルギーを十分に活用できず、反応効率やエネルギー効率が低いという課題がありました。
九州大学大学院工学府の西村 和也 氏(博士前期課程修了)、大学院工学研究院の松本 光 助教、矢野 武尊 助教、長尾 匡憲 助教、三浦 佳子 教授らの研究グループは、安価かつ簡便に作製できる高分子の粒子を反応器に充填し、その粒子のスキマで光が幾度も反射される「光閉じ込め効果」を世界で初めて見出しました。粒子のモデリングと光の通過シミュレーションを駆使することで、粒子のスキマで光が幾度も反射し、反応器内に長く留まっていることが明らかになりました。これにより、微弱な照射でも光触媒反応を加速でき、医薬や染料の原料となるアントラキノン類の高効率合成に成功しました。
今回のように、光触媒自体を改変することなく、「光閉じ込め効果」を発現する反応器は世界的に例がありません。今後、太陽光を直接かつ高効率に利用した、新しいモノづくりへの貢献が期待されます。
本研究成果はElsevier社の国際誌「Chemical Engineering Journal」に2026年6月1日に公開されました。
研究者からひとこと
安価かつ入手の容易な材料をベースとして、その特性を積極的に使い新しい反応器を設計するアプローチは、SDGsに適ったモノづくり技術として有望と考えています。今後の研究の展開にご期待いただくとともに、共同研究の可能性についてもご検討よろしくお願いいたします。(松本 光)
用語解説
(※1) 光触媒
光を吸収して化学反応を促進する触媒。反応後も自身は変化せず、繰り返し利用できる。
(※2) 高分子
多数の分子が鎖状につながった材料の総称。安価な基礎化学品から作られることが多く、プラスチックや繊維など幅広い製品に利用される。
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