農学研究院
角田 佳充 教授/寺本 岳大 助教
ポイント
・免疫応答やHIV感染に関わるヒト細胞表面受容体CCR5(※1)は、特定のチロシン残基がタンパク質チロシン硫酸転移酵素 hTPST(※2)によって硫酸化修飾され、その機能が調節される。しかし、その詳細な分子機構は不明であった。
・hTPSTとCCR5由来ペプチドの複合体をX線結晶構造解析(※3)により決定し、ゴルジ膜上で硫酸化修飾する分子機構を明らかにした。
・本研究は、免疫応答やウイルス感染を制御する新たな手法への展開が期待される。
概要
ヒト細胞表面受容体CCR5は、免疫応答に関わるケモカイン受容体であると同時に、HIVが細胞へ侵入する際に利用する重要な共受容体としても知られています。CCR5のN末端領域には複数のチロシン残基が存在し、これらが硫酸化されることで、ケモカインやウイルスタンパク質との相互作用が調節されます。しかし、CCR5の各チロシン残基がどのように硫酸化酵素に認識されるのか、その詳細な分子機構は十分に分かっていませんでした。
九州大学大学院農学研究院の角田 佳充 教授、西本 悦子 准教授、寺本 岳大 助教、大学院生物資源環境科学府の田中 槙之助 氏、豊田 滉太 氏、浅野 陽来 氏(当時)らの研究グループ(生物物理化学研究室)は、宮崎大学農学部の黒木 勝久 准教授、榊原 陽一 教授らとの共同研究により、ヒトの細胞表面受容体CCR5からデザインした部分ペプチドが、タンパク質チロシン硫酸転移酵素hTPSTによって認識される状態の構造機能解析を行いました。それらより、ヒトの細胞表面受容体CCR5が、タンパク質チロシン硫酸転移酵素hTPSTによって硫酸化翻訳後修飾される分子機構を明らかにしました。
本成果は、CCR5のチロシン硫酸化がどのように起こるのかを原子レベルで理解するための重要な基盤となります。今後、他のケモカイン受容体の硫酸化制御機構の解明や、免疫応答、ウイルス感染、炎症反応に関わる分子認識の理解への貢献を通じて、それらを制御する新たな手法への展開が期待されます。
本研究成果は、John Wiley&Sons社の学術雑誌「The FEBS Journal」に2026年5月22日(現地時間)に掲載されました。
用語解説
※1 CCR5
…C-C chemokine receptor type 5の略称。免疫応答に関わるケモカイン受容体の一種であり、ヒト細胞膜上に存在する膜タンパク質です。CCR5のN末端領域にあるチロシン残基は硫酸化を受け、この修飾はケモカインとの結合やHIVウイルスの細胞侵入に関与します。
※2 hTPST
…human tyrosylprotein sulfotransferaseの略称。ヒトのゴルジ体内腔でタンパク質のチロシン残基を硫酸化する酵素。
※3 X線結晶構造解析
…タンパク質などの結晶にX線を照射し、得られた回折データから原子レベルの立体構造を決定する手法。
※4 PAPS
…PAPSは硫酸基の供与体、PAPは硫酸基転移後に生じる反応産物。本研究では、hTPST、PAP、CCR5ペプチドの複合体構造を解析した。
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