医学研究院
三浦恭子 教授
ポイント
・がんや低酸素への強い耐性、そして長寿で知られるハダカデバネズミ(図1)について、日本で飼育されている個体のゲノムを高精度に解読しました。
・ゲノム解読*1の結果、本種では未発見であった遺伝子を発見(167個)、または既存の遺伝子に対して修正モデルを提案しました(250個)。これにより遺伝子を種内または種間で比較する際に必要な精度と信頼性を高めました。
・74個の遺伝子に顕著な種内変異を確認し、その中には神経伝達物質の受容体など社会行動(攻撃性やトンネルの掘削行動)にかかわる可能性のある遺伝子が含まれていました。同定した変異遺伝子を表現型解析(行動・生理)と組み合わせることで、本種の個体差を遺伝子レベルで解明する手がかりとなります。
・ハダカデバネズミは近年、健康長寿モデル哺乳類として大きな注目を集めており、今回のゲノムデータはその分子基盤の理解を加速し、抗老化・疾患耐性機構の解明と将来的なヒトへの応用研究を推進する重要な基盤となります。
概要
広島大学大学院統合生命科学研究科の栂浩平研究員と坊農秀雅教授、九州大学大学院医学研究院の岡香織助教、三浦恭子教授(研究当時の所属:熊本大学大学院生命科学研究部)、東京科学大学の田中裕之助教、伊藤武彦教授、国立遺伝学研究所の豊田敦特任教授らは、日本で飼育されているハダカデバネズミ (Heterocephalus glaber)のゲノム解読に成功しました。
一般に、ゲノム情報は一種につき一つの配列が代表配列(リファレンスゲノム)として決定されます。しかし、ハダカデバネズミでは、種内の遺伝的な違いが大きいことが指摘されており、従来のリファレンスゲノムではこの多様性を十分に捉えきれない可能性があります。本研究では、日本で飼育されている個体のゲノムを新たに解読し、種内に存在するゲノム配列の違いを明らかにすることを目的としました。その結果、リファレンスゲノムより多くの遺伝子を保有するゲノムが得られ、これまで報告されていなかった遺伝子や、構造が不正確であった遺伝子を多数同定しました。さらに、リファレンスゲノムとの比較解析により、74遺伝子に顕著な種内変異が確認され、その中には行動制御に関わる可能性のある遺伝子も含まれていました。今後、この遺伝子の多様性が生理的・行動的な特徴にどのように関係するのかを、表現型解析と組み合わせて検証することで、ハダカデバネズミにおける種内変異の生物学的意義の解明が期待されます。
なお、本研究で解析に用いたハダカデバネズミ試料は、熊本大学大学院生命科学研究部において飼育されていた個体から取得されました。
用語解説
*1 ゲノム解読:DNA断片をコンピューター上でつなぎ合わせることで行います。
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