液晶と高分子の複合材料で生じる新しい電気流体現象

~ポストディスプレイ技術やエネルギー利用への応用に期待~

工学研究院
日高 芳樹 助教

ポイント

・液晶と高分子の複合材料は、応用が期待される一方、動的な物理現象は未解明だった
・世界で初めて、この複合材料の中で電圧による新しい流れの構造を発見し、電流特性を解析
・今回の複合材料を多孔質媒体(※1)の新しいモデルとして、地下のエネルギー資源の利用研究への応用も期待

概要

高分子の細かい網目構造の中に液晶を閉じ込めると、「高分子ネットワーク液晶」ができます(図)。この材料は、電圧で透明と不透明を切り替えるスマートガラスや、高速応答のディスプレイなどへの応用が実現されてきました。しかしこれまでの研究は、主に材料化学として静的な性質に注目しており、電圧を加えたときに生じる流れの構造や電流など、動的な物理現象は十分に理解されていませんでした。こうした動的な現象の解明は、新しい液晶応用の可能性を広げることが期待されています。それだけでなく、液晶を「小さな流体実験室」として利用することで、他分野の現象を理解する手がかりにもなり得ます。

九州大学大学院工学研究院の日高芳樹助教と井福弘基・児島亮平元工学府修士大学院生らの研究グループは、高分子ネットワーク液晶に電圧を加えて流れを起こす実験を行いました。その結果、液晶が高分子の細かい網目構造に閉じ込められると、電圧をかけたときに現れる流れの模様がゆがみ、動きが遅くなること、さらに電流が流れにくくなることを明らかにしました。そして、高分子ネットワークが密になるほどこれらの傾向が強まることを示し、この複合材料が「多孔質媒体」として振る舞うことを初めて実験的に示しました。

この発見は、現在さまざまな側面から研究されている、液晶を利用した新しいポストディスプレイ技術の開発に役立つことが期待されます。また、今回の複合材料を「多孔質媒体のモデル」として用いることで、地下水の流れやエネルギー資源利用など、環境や資源に関わる研究への応用の可能性も広がります。今後は、材料内部の構造観察と組み合わせることで、より詳細な理解が進むと考えられます。

本研究成果は、アメリカ物理学会の学術誌「Physical Review E」に2025年8月27日(水)に掲載されました。

研究者からひとこと

液晶や高分子は「ソフトマター」と呼ばれる物質で、液晶ディスプレイや、コンタクトレンズに使われる高分子ゲルなど、私たちの日常生活の中で広く使われています。一方、多孔質媒体は、資源、エネルギー、環境、土木など、社会全体を支えるインフラと深く関わります。両者はこれまでまったく交わりのない研究対象でしたが、今回の研究で初めて接点をもち、その重なりが新しい視点を与えてくれました。このような異なる領域の交わりに、研究の醍醐味があると感じています。 (日高助教)

用語解説

(※1) 多孔質媒体
小さなすき間を多数含む物質。シリカゲルのような材料や、岩石や土壌など多くの物質が該当する。

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工学研究院 日高芳樹 助教

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