-生体組織内の転写制御機構の解明と創薬への応用に期待-
生体防御医学研究所
馬場 義裕 教授 / 大川 恭行 教授
ポイント
・遺伝子の転写に働いているRNAポリメラーゼIIの場所を生体組織で可視化できるマウスを世界で初めて樹立。
・多様な組織において数百〜数千の転写の場所が観察され、細胞種や細胞の分化状態によってその数や動きが大きく異なることを発見。
・個体の発生、免疫応答、がんや老化など、生命現象の理解や医療研究への応用に期待。
概要
東京科学大学(Science Tokyo) 総合研究院 細胞制御工学研究センターの木村宏教授、九州大学 生体防御医学研究所の馬場義裕教授、大川恭行教授、大阪大学 微生物病研究所の伊川正人教授らの研究チームは、生きた細胞で遺伝子が転写されている場所を観察できる新しいマウスモデルを開発しました。
遺伝子からmRNAを作る酵素であるRNAポリメラーゼIIが遺伝子を読み取る際に受けるリン酸化(用語1)に着目し、これを認識する蛍光抗体を全身で発現するマウスを作製しました。このマウスの各組織の細胞を超解像蛍光顕微鏡(用語2)で観察することで、遺伝子が活発に読み取られている場所を可視化することができました。これにより、これまで固定標本でしか見られなかった遺伝子が転写されている場所を、生きた状態の生体組織内でリアルタイムに追跡することが可能になりました。さまざまな組織における転写の場所を調べた結果、脾臓内の免疫細胞(用語3)ではその種類に応じて転写の場所の数が大きく異なることが分かりました。また、増殖する細胞は分化した細胞に比べて転写の場所が動きやすいことも明らかになりました。本研究により、組織や細胞種に応じて転写の場所と動きが異なることが分かりました。
本研究で作製したマウスは、発生や分化、環境応答、老化、病態発症などに伴う遺伝子の転写制御機構の解明に有用であると考えられ、創薬や治療法開発への応用も期待されます。
本成果は、8月13日付の「Journal of Molecular Biology」誌オンライン速報版に掲載されました。
用語解説
(1)リン酸化
タンパク質のセリン残基などの酸素にリン酸が付加されること。リン酸化は除去(脱リン酸化)されることがあるため、可逆的である。タンパク質の機能や局在などに影響する。
(2)超解像蛍光顕微鏡
光学顕微鏡観察時の分解能の限界値(200ナノメール程度)を超えるような顕微鏡(2014年ノーベル化学賞)。本研究で使用したシステムの分解能は140ナノメートル程度。
(3)免疫細胞
体を異物から守る防御システムに関係する細胞。抗体を産生するB細胞、T細胞(B細胞などの活動を調節するヘルパーT細胞、細胞を直接攻撃するキラーT細胞)、細菌などを貪食する好中球などが存在する。
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