オートファジーによるミトコンドリア分解の仕組みとその微細構造を解明

~隔離膜はミトコンドリアに密着して伸長する~

医学研究院
山下 俊一 助教

ポイント

・ミトコンドリアオートファジー(※1)(マイトファジー)誘導時に、ミトコンドリア外膜に密着する隔離膜(※2)の微細構造を明らかにしました。
・マイトファジーに必須な因子であるBNIP3とNIXが、ミトコンドリアと隔離膜の間に集積し、両者の密着を促進することを明らかにしました。
・BNIP3とNIXを介したマイトファジーは、ミトコンドリアの恒常性維持に重要です。今回新たに発見した微細構造とその分子機構は、ミトコンドリア異常を伴う疾患に対する有望な治療標的となることが期待されます。

概要

マイトファジーは、異常なミトコンドリアを選択的に分解することで、ミトコンドリア機能の維持に貢献するとともに、異常ミトコンドリアより生じるストレスから細胞を保護しています。ある種のミトコンドリア外膜タンパク質はマイトファジーレセプター(※3)と呼ばれ、オートファジーに必須な膜構造体(隔離膜)をミトコンドリア上に繋留することでマイトファジーを促進します。しかしミトコンドリアと隔離膜がどのように接触するのかは分かっていませんでした。

九州大学大学院医学研究院の山下俊一助教、神吉智丈教授、名古屋大学大学院医学系研究科の荒井律子講師、福島県立医科大学の和栗聡教授らの共同研究グループは、長年未解明だったミトコンドリア-隔離膜複合中間体の微細構造とその形成分子機構を明らかにしました。具体的には、ミトコンドリア-隔離膜接触部位の電子顕微鏡観察により、隔離膜がミトコンドリア外膜に密着して伸長すること、さらにマイトファジーレセプターがミトコンドリアと隔離膜の間に集積することでこの密着を可能にしていることを解明しました。

今回の研究成果は、マイトファジー研究のブレイクスルーとなるだけでなく、ミトコンドリア異常を伴う様々な疾患に対する治療法の開発において有望な標的として期待されます。

本研究は、ウォルター・エリザ・ホール医学研究所のMichael Lazarou教授、カリフォルニア工科大学のDavid C. Chan教授らとの共同研究で行われ、研究成果は米国の科学雑誌「Journal of Cell Biology」に2025年5月12日(月)午後10時(日本時間)に掲載されました。

用語解説

(※1) オートファジー
細胞が自身の成分を分解する現象を指し、自食作用とも呼ばれます。細胞内で新たに作り出された二重膜(隔離膜)が伸長し、細胞成分を包み込んで球状の構造(オートファゴソーム)になった後、ここに分解酵素を含むリソソームが融合することによって内容物が低分子へと分解されます。オートファジーはタンパク質をアミノ酸に分解して栄養として再利用するだけでなく、ミトコンドリアや小胞体のような細胞小器官を分解することで、その質や量を調節しています。

(※2) 隔離膜
オートファジー誘導時に細胞質に出現する扁平な二重膜構造体を隔離膜と呼びます。隔離膜は伸びながら湾曲し、ミトコンドリアなどを包み込んでオートファゴソームとよばれる小胞になります。

(※3) マイトファジーレセプター
ミトコンドリア外膜タンパク質の中でも、隔離膜タンパク質であるLC3と結合することができるドメインを持つタンパク質群をマイトファジーレセプターと呼びます。代表的なマイトファジーレセプターには、BNIP3、NIX (BNIP3L)、FUNDC1、BCL2L13、FKBP8があります。

詳細

本研究の詳細はこちらをご参照ください。

お問合せ先

医学研究院 山下俊一 助教
医学研究院 神吉智丈 教授

キノコの酸化酵素を用いた有用反応探索

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