生物が加工する透明ガラス流路

植物根や菌糸によるガラス内への3次元微細複雑構造の生成

工学研究院
津守 不二夫 教授

ポイント

・植物や菌類を利用し、ガラス内に複雑3次元微細流路ネットワークを形成する新技術を開発
・生物の成長パターンを活用でき、従来技術では困難な最適化された流路構造を実現
・工学分野での応用に加え、土壌中の生体構造を3次元的に観察する新手法としても期待

概要

  従来、微細流路の製造には複雑な加工技術が必要であり、特に生体組織に見られるような複雑な3次元構造の再現が困難でした。また、土中で成長する植物の根や菌類の構造を詳細に観察することも容易ではありませんでした。
 本研究は植物の根や菌類の菌糸を利用し、ガラス内に複雑な3次元微細流路ネットワークを形成する新しい製造技術を開発しました。この技術は、工学的応用だけでなく、土中の植物根や共生菌の3次元構造を観察する新しい方法としても注目されています。
 九州大学大学院工学研究院の津守不二夫教授、工学府修士学生(当時)の古賀哲郎氏、中島翔太氏らの研究グループは、シリカナノ粒子を含む特殊な培地で植物や菌類を培養し、その成長パターンをガラス内の流路構造として転写する手法を開発しました。この手法により、主根から側根、根毛、さらに植物根に共生する菌根菌の菌糸へと連続的につながる階層的な流路構造の作製に成功しました。また、実際に送液実験を行いガラス内流路として機能することを実証しました。
 本研究成果は、マイクロリアクターや熱交換器、組織工学などの工学分野での応用が期待されます。さらに、土中で3次元的な観察が困難な生体を固定し、微細な3次元構造を観察できる新しい方法としても有効であるため、植物根や菌糸ネットワークを構成する根圏の状態を固定化し詳細観察を行う新たな研究手法として貢献することができます。
 本研究成果は2024年9月10日に科学誌「Scientific Reports」にオンライン掲載されました。

研究者からひとこと

今回の方法で作製されたガラス構造を顕微鏡で最初に覗き込んだとき、生きた植物とまったく変わらない見た目に息を飲みました。生体の作る複雑な構造を、硬く透明なガラスの中に空洞として再現しています。植物のような生体自体が材料を加工する新しいプロセスにご注目ください。

お問い合わせ先

工学研究院 津守不二夫 教授

詳細

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