好熱性シアノバクテリアから新規多量体構造の光捕集色素タンパク質を発見

好熱性シアノバクテリアから新規多量体構造の光捕集色素タンパク質を発見

 シアノバクテリアなどの水中光合成生物は効率的に光エネルギーを化学エネルギーに変換するためにフィコビリソームと呼ばれる巨大な光捕集アンテナ色素タンパク質の複合体を有しています。フィコビリソームを構成する複数種の色素タンパク質は構造が明らかにされており、いずれの構造も3量体が重なったドーナツ型6量体であることが、いわばこれまでの常識でした。
 本研究では、阿蘇くじゅう国立公園内の温泉から新規に単離した好熱性シアノバクテリアの一種Thermoleptolyngbya sp. O-77から色素タンパク質フィコシアニンを精製し、X線結晶構造解析及びクライオ電子顕微鏡単粒子解析によって構造を明らかにしたところ、従来知られていた6量体のほかに、4量体が重なったドーナツ型8量体も存在するということを世界で初めて見出しました。同一の組成を有する単量体ユニットが異なる多量体構造をとることは極めて珍しく、タンパク質の機能的・進化的観点からも興味深い研究成果です。また、8量体結晶は直径10 nmに及ぶ特異的な巨大空間を有しており、優れた触媒や吸着剤として利用できることも示唆されました。色素タンパク質の新しい形成メカニズムの提示やこれまでに知られていなかった8量体の構造的知見により、本研究は今後、フィコビリソームの形成プロセスやシアノバクテリアの光捕集におけるエネルギー移動機構の解明、さらには高効率な人工光合成システムの開発に役立つことが期待されます。
 本研究は九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I2CNER)の尹基石准教授と湊拓生博士 (現広島大学助教)の研究グループ、同大学大学院農学研究院の角田佳充教授と寺本岳大助教の研究グループ、高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所の千田俊哉教授と安達成彦特任准教授の研究グループとの共同研究により、九州大学大学改革活性化制度や日本医療研究開発機構の創薬等先端技術支援基盤プラットフォーム(JP21am0101071)などの支援を受けて実施されました。本成果は令和3年10月29日(金)(日本時間)に英国の学術誌「Communications Biology」にオンライン掲載されました。(DOI: 10.1038/s42003-021-02767-x)

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