電気を一瞬流すだけで金属が強くしなやかに

~数ミリ秒でチタン合金の限界を超える新加工法~

工学研究院
木村 康裕 准教授

ポイント

・パルス電流を用いた高速・低エネルギー材料処理法を開発
・結晶組織を非平衡的に制御※1し、チタン合金の靭性※2を大幅に向上
・電流の非熱的効果※3を活用した新しい材料設計戦略に期待

概要

熊本大学 先進マグネシウム国際研究センターの顧 少杰(グ シャオジェ)助教、同大学 大学院先端科学研究部の徳 悠葵教授および森田 康之教授、九州大学 大学院工学研究院の木村 康裕准教授、名古屋大学 大学院工学研究科の崔 羿(スイ イ)准教授、浙江大学の巨 陽(ジュ ヤン)主幹教授(熊本大学客員教授)らの研究グループは、わずか数ミリ秒という極めて短時間の電流処理によって、チタン合金を大幅に強靭化する新手法を開発しました。

本研究では、二相チタン合金に対し、「高密度パルス電流※4(HDPEC)処理」を適用することで、非平衡な原子拡散と相変態を瞬時に誘発し、組織の微細化および多相化を実現しました。その結果、材料の靭性を最大30%向上させることに成功しました。従来の熱処理とは異なり、本手法は、電流中を流れる電子が原子を直接押し動かす電子風力(非熱的効果)を活用する点が特徴です。これにより、エネルギー消費を50%以上削減することにも成功しています。

本成果は、航空機構造材や人工関節などに用いられる高性能チタン材料の、革新的かつ省エネルギーな加工プロセスとしての応用が期待されます。

なお、本研究成果は令和8年4月13日、国際学術誌 「Nature Communications」に掲載されました。

本研究は、科学技術振興機構(JST)による研究費、日本学術振興会(JSPS)科研費、ならびに熊本大学先進マグネシウム国際研究センターの支援を受けて実施されました。

用語解説

※1. 非平衡的制御:材料が熱力学的な平衡状態に到達する前の短時間に、原子拡散や相変態を意図的に誘起して組織を制御する手法。

※2. 靭性:材料が外力を受けた際に、割れたり破断したりするまでにどれだけエネルギーを吸収し、変形に耐えられるかを示す性質。強度と延性の両方に関係する重要な力学特性。

※3. 非熱的効果:電流による加熱(ジュール熱)とは異なり、電子の流れそのものが原子に力を及ぼすことにより生じる効果。代表的なものとして、電子と原子の力学的相互作用、電子風力が挙げられる。

※4. 高密度パルス電流:短時間に高密度の電流を流し電子風力を金属材料に導入する処理技術。

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工学研究院 木村康裕 准教授

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