リビングラボを用いて思考実験と経験的洞察の統合で新学際研究領域「責任あるロボティクス」へ

~高次哲学的考察とHRI実証研究を統合した革新的なAI倫理影響評価方法論の提案~

高等研究院
翁 岳暄 准教授

ポイント

・AIのペーシング問題(※1)によって引き起こされる知能ロボット規制のギャップを克服するための革新的なデザイン主導型ガバナンス(※2)として、ロボット倫理の標準化と規制におけるリビングラボ(※3)の新たな応用を探求することを目的としています。
本研究の内容は現実世界において発生するロボットの倫理的、法的、社会的課題(ELSI)を対象として、九州大学におけるLOVOT人間型ロボットのプライバシー保護問題と東北大学における「優しい嘘」をつく知能ロボットの倫理配慮問題に基づくリビングラボを用いて高次哲学的考察とHRI実験(※4)を統合した業界初ハイブリッドAI倫理影響評価方法論を提案しました。
九州大学高等研究院と東北大学学際科学フロンティア研究所の戦略的連携で、福岡と仙台の両ハブの上に構築された総合知・超学際組織リサーチ・ネットワークROBOLAW.ASIAを通してIEEE P7017リビングラボと青葉山リビングラボを活用し新学際研究領域「責任あるロボティクス」の促進が期待されます。

概要

ロボットが日常生活に統合されると、人間との相互作用に起因する複雑な倫理的、法的、社会的課題(ELSI)が生じます。ソーシャルロボットは、文化的規範、感情、社会的手がかりが豊富な環境で動作するため、プライバシー、信頼、安全性に関する重要な問題を提起します。本研究では、九州大学高等研究院の翁岳暄准教授(東北大学学際科学フロンティア研究所(クロスアポイントメント))、同大学大学院法学府のDavid Torabi(デイビッド トラビ)院生、オスロ大学大学院情報科学研究科のJim Torresen(ジム トレセン)教授、東北大学大学院工学研究科の董宗昊特任助教、東北大学大学院工学研究科の平田泰久教授らの協力のもとロボット倫理学という学際的な分野が、思考実験と実証研究を組み合わせたハイブリッドな方法論的概念を通じて、これらの課題をどのように対処できるかを探ります。思考実験は、倫理的なジレンマを体系的に分析するための枠組みを提供します。一方、実証的な方法は、こうした理論を現実世界で検証し、より洗練させるための洞察を与えます。
本論文では特に、ロボットが倫理的な期待や法的基準に適合することを確保するために、倫理設計の原則をロボット設計に組み込み、テストする場として「リビングラボ」を活用する重要性を強調しています。

本研究成果はアメリカの雑誌「IEEE Robotics & Automation Magazine」に2025年12月11日付で掲載されました。

用語解説

(※1) AIのペーシング問題
技術開発のスピードと、AI対応技術の規制に対する立法措置の遅さとのミスマッチが明らかとなっている問題のこと。

(※2) デザイン主導型ガバナンス
AI搭載型ソーシャルロボットがもたらす設計・倫理・ガバナンスの課題を多角的に検討。ソーシャルロボットを技術・行動・規範が相互作用する「社会技術システム」として捉え、開発初期段階から統合的視点を取り入れる必要性を重視する基本的な姿勢を強調。

(※3) リビングラボ
実際の生活環境の中で新しい技術やサービスを開発・検証するための手法。ユーザーや市民が開発プロセスに積極的に参加し、実環境でのフィードバックを提供。リビングラボがAI規制において重要な理由はAIシステムの実際の社会的影響を、管理された実環境で観察・評価でき、過度な規制によるイノベーション阻害を避けつつ、適切な安全措置を見出すための実験的アプローチを提供する。

(※4) HRI実験(Human-Robot Interaction:ヒューマン・ロボット・インタラクション実験)
人間とロボット間の相互作用を研究・評価するための実験。HRI実験は、より自然で効果的な人間とロボットの関係構築に向けた知見を提供し、将来のロボット技術の設計や実装に重要な役割を果たしている。

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高等研究院 翁 岳暄 准教授

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