妊娠中の喘息やストレスが子供の喘息を悪化させるメカニズムを解明

―肺の免疫細胞のエピジェネティックな記憶―

生体防御医学研究所
伊藤 美菜子 准教授

ポイント

・喘息は世界中で約2億6000万人以上が影響を受けている重大な健康問題
・妊娠中の喘息によって増加するストレスホルモンが産まれてくる子供の喘息リスクを増大させることを世界で初めて発見
・妊娠中の喘息やストレスの軽減による子供の喘息リスクの低下に期待

概要

妊娠中の環境要因(喫煙、ストレス、母親の喘息など)が産まれてくる子供の喘息の発症リスクを高めることが知られています。喘息を含むアレルギー性炎症には2型自然リンパ球(ILC2)(※1)が重要な役割を果たしています。しかし、妊娠中の喘息が胎児の免疫細胞にどのような影響を与え、それが子供の喘息発症にどのように関連しているのかは解明されていませんでした。

九州大学生体防御医学研究所の伊藤美菜子准教授、高尾智彬大学院生らの研究グループは、同研究所の須山幹太教授らとの共同研究により、喘息を起こした母親マウスから産まれた子供では、肺のILC2の数が増え、アレルギー応答を引き起こす機能も高まることで、喘息が悪化することを発見しました。母親の喘息により、胎生期および成体の肺のILC2では共通するエピジェネティック(※2)な変化が維持され、アレルゲン(※3)に対するアレルギー応答が過剰になることが明らかとなりました。母親が妊娠中にストレスホルモンであるグルココルチコイドに曝されることでも、胎児の肺ILC2に母親の喘息時と同様の変化が生じて、子供のアレルギー性炎症を増悪させることが分かりました。

今回の発見は、子供の喘息の予防に新たな道を開くものであり、特に妊娠中の母体の健康やストレス管理の重要性を示しています。

本研究成果は 英国の雑誌「Nature Communications」に 2025年 1 月 14日 (火)に掲載されました。

用語解説

(※1) 2型自然リンパ球(ILC2)
免疫システムの一部である自然リンパ球の一種。アレルギーや喘息などの「2型炎症」に関与する。抗原を認識する受容体を持たず、主に気道や腸管などの粘膜組織に存在する。

(※2) エピジェネティック
DNAの配列そのものを変えることなく、遺伝子の働きを調節する仕組み。DNAメチル化・ヒストン修飾・クロマチン構造の変化などがある。

(※3)アレルゲン
アレルギー反応を引き起こす物質。代表例として、食物、花粉、ダニなどがある。OVA(Ovalbumin、卵白アルブミン)鶏卵の卵白に含まれるタンパク質。HDM(House Dust Mite)ハウスダストに含まれるダニ由来のアレルゲン。

詳細

本研究の詳細はこちらをご参照ください。

お問い合わせ先

生体防御医学研究所 伊藤美菜子 准教授

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