生体分子モーターは細胞内道路の新陳代謝を促進する

生体分子モーターは細胞内道路の新陳代謝を促進する

 九州大学大学院芸術工学研究院の井上大介助教とフランス原子力代替エネルギー庁のマニュエル・テリー博士、ローハン・ブランシュワン教授、サラ・トリクラン氏(博士課程学生)らの研究チームは、細胞内道路である微小管(※1)の構造がリニューアルされる新たな機構を発見しました。
 人間の体は約30兆個の細胞から構成されています。小さな細胞内では、様々な物質が運搬されており、繊維状タンパク質の微小管は、物質輸送における道路の役割を果たしています。人間社会において、車が道路を通ると摩耗しますが、この摩耗は舗装工事によって修復されます。細胞内道路である微小管でも同じように、微小管が摩耗し、修復されることを発見しました。
 細胞内では、生体分子モーター(※2)とよばれる僅か数十ナノメートル程度の分子機械が微小管に沿って2足歩行し物質を運んでいます。同研究グループは、細胞内物質輸送系を試験管内で再構築し、生体分子モーターが微小管を摩耗、崩壊させることを発見しました。一方、微小管の材料タンパク質が微小管の周りに豊富に存在すると、摩耗部位が自己修復され、微小管は崩壊することなく道路としての機能が維持されることが明らかとなりました。見方を変えると、生体分子モーターは、微小管の新陳代謝を促進していると考えることができます。微小管は神経細胞に多く含まれ、微小管の機能不全は様々な神経疾患にも繋がります。今回の研究で発見した微小管の新陳代謝を促進する機構は、これらの病気のメカニズムの解明や治療に役立つことが期待されます。
 本研究成果は、2021 年 1 月 22 日(金)午前 1 時(日本時間)にNature Publishing Group発行 Nature Materials誌 にて公開されました。

用語の解説

※1 微小管:
微小管は、構成材料であるチューブリンというタンパク質が連なってできる直径 25 ナノメートル、長さ約数十マイクロメートルの中空上の生体繊維(ナノは 10 億分の 1 メートル、マイクロは 100 万分の 1 メートル。髪の毛 が 60~100 マイクロメートル、微小管は髪の毛の 3000 分の 1 程度の太さ)。細胞内の物質輸送のレールとしてだけでなく、細胞の形態維持や染色体分離、繊毛運動など、細胞内で様々な役割を果たしている。
※2 生体分子モーター:
数十ナノメートル程度のタンパク質で、2つの微小管結合部位を有する。生体のエネルギー通貨であるアデノシン三リン酸(ATP)を消費して、2つの微小管結合部位を交互に繰り出すことで、微小管上を2足歩行する。微小管結合部位と反対側の部位に、輸送物質を結合させ、微小管を道路として細胞内輸送を担う。

詳細

九州大学プレスリリースをご参照ください。

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