色覚の違いが絵画の見方や印象に与える影響の実証

〜多数派の3色覚の視線はより似ているが、少数派の2色覚を持つ人も豊かな印象を得ている〜

ポイント

・ヒトの色覚には多様性があり、多数派の3色覚以外に2色覚など少数派の色覚を持つ人もいます。色覚の違いが複雑な光景を見る際にどのように影響するかはわかっていませんでした。
・本研究では、色覚の違いが絵画を見る初期(約5秒間)に視線に影響を与える一方、色彩印象は生まれつきの色覚に大きく影響されないことを明らかにしました。
・2色覚の見え方を模擬した画像を3色覚の人が見たとき、色彩に乏しいと感じるかもしれません。しかし、2色覚の人でも、3色覚の人でも、自身に特有の色空間を長期間経験することで独自の色彩感覚が形成され、色彩を含む固有の印象が生まれると考えられます。

概要

 ヒトの一般的な色覚は3色覚ですが、2色覚などの少数派の色覚を持つ人もいます。2色覚の見え方を模擬した画像により、一般的な3色覚を持つ人が2色覚の見え方を推測することは可能です。しかし、生まれつき2色覚の色空間で生きている人々が日常目にするような複雑な光景にどのように目を向け、印象の受け方が3色覚を持つ人とどのように異なるのかはよくわかっていませんでした。
 本研究では、色覚の違いが絵画画像を見る際の視線に影響すること、しかし遺伝的な色覚の違いは絵画の色彩印象には大きな影響を与えないことを実証しました。
 九州大学大学院芸術工学研究院の平松千尋准教授、芸術工学部卒業生の高嶋龍彦氏らの研究グループは、2色覚や3色覚など異なる色覚を持つ人々を対象として、多様な色や明るさの空間分布を示す絵画画像を見ている際の視線を計測し、絵画の印象を様々な形容詞を用いて評価してもらう実験を行いました。個人の視線の相関解析により、3色覚同士の視線は2色覚同士より似ていることがわかりました。また、3色覚の人が2色覚の見え方を模擬した画像を見た時の印象の方が、生まれつき2色覚の人が持つ印象よりも、3色覚の人の印象と異なることがわかりました。
 これらの結果から、色情報は視線を誘導する重要な手がかりである一方、色彩印象は個人に特有の色空間を生涯に渡り経験することで、個人の中で基準が作られると考えられます。今後は、色覚によらずどのように主観的な色彩印象が様々な色覚を持つ人々において形成されるかの解明が期待されます。
 本論文は、学術誌「英国王立協会紀要」オンライン版で2023年9月13日(水)に公開されました。

詳細

詳細はプレスリリースをご参照ください。

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