~ 狭窄空間内への新たな原子層堆積手法の開発 ~
ポイント
・きわめて狭い空間(マイクロ空間)に対して均一に原子層堆積(ALD)を行う新手法を開発した。
・従来困難だったレベルの狭窄空間(長さ1000mm、内径100μm のキャピラリーチューブ)に対しても均一なALDが可能となった。
・さまざまな形状の材料に対してALDを用いて表面特性を変調させる新手法としての発展が期待される。
概要
東京大学大学院工学系研究科の柳田剛教授、細見拓郎助教、亀井龍真大学院生、京都大学大学院工学研究科の久保拓也准教授、京都大学薬学研究科の金尾英佑助教らによる研究グループは、きわめて狭いマイクロ空間に対して均一に原子層を堆積する新しい方法を開発しました。
これまで、微細な構造表面に対して膜厚・膜組成を細やかに制御しながら空間均一的に金属酸化物を堆積させる手法として原子層堆積(ALD 注1)法が広く用いられてきました。しかし、キャピラリーチューブ(注2)のような狭い空間に対しては金属酸化物の前駆体を供給することが難しく、適用に課題がありました。本研究では、狭い空間の両端に大きな圧力差をつけることのできるALD装置を新たに開発することで、長さ1000mm、内径100μm というきわめて細長いキャピラリーチューブの内壁に酸化チタン層を均一に成膜することに成功しました。
また、酸化チタンをコーティングしたキャピラリーマイクロチューブは、優れた熱的および化学的堅牢性を示し、さまざまな分子混合物を分離精製することが出来る流路(カラム)として適した性能を発揮しました。ALDが可能な形状の適用範囲を大幅に広げたという点で本成果は意義深く、今後さまざまな狭窄空間内の表面特性を自在に変調させるための新手法として発展することが期待されます。
用語解説
(注1)原子層堆積:分子反応を利用することで、金属酸化物や金属の原子層を1層ずつ堆積する手法。
(注2)キャピラリーチューブ:おおむね内径1mm以下の毛細管のこと。クロマトグラフィによる分離等に用いられる。
詳細
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