高分子鎖の新しい吸着機構を発見

〜接着剤で自動車を組み立て、カーボンニュートラルの実現へ!〜

ポイント

・接着剤で自動車を組み立てるには、接着界面を信用できるかが鍵
・高分子鎖が絡んで固体上に吸着することを世界で初めて可視化
・自動車製造時における二酸化炭素の低排出化および自動車の燃費向上に期待

概要

 複数の軽量かつ高強度な材料を適材適所で組合せる“マルチマテリアル技術”が、グリーン成長戦略の切り札として注目されています。例えば、非鉄金属と炭素繊維複合材料の組合せは、モビリティの軽量化を実現し、省エネルギー化によるカーボンニュートラルに貢献できます。マルチマテリアル化を推進するためには、従来の接合技術を超えた信頼性のある接着技術の構築が必要です。また、接着技術の革新は燃費だけでなく、組立工程からリサイクル工程まで変革しうることから、モビリティライフサイクルにおける環境負荷の低減にも多く貢献します。しかしながら、これまで、接着剤の構成成分である高分子が被着体上でどのように界面を形成しくっついていくのかわからず、その本質的なメカニズムが未解明となっておりました。本研究では、高分子の異種材料表面への吸着挙動、ならびに、これを起点とする界面層の形成を世界で初めて視覚的に解明し、接着界面の新しい形成機構を明らかにしました。
 盛満 裕真 助教(九州大学)、松野 寿生 准教授(九州大学)、織田 ゆか里 准教授(静岡大学)、山本 智 教授(九州大学)、田中 敬二 主幹教授(九州大学)らの研究グループは、原子間力顕微鏡(AFM)観察に基づき、長さの異なるデオキシリボ核酸(DNA)の固体材料上への吸着過程を解析しました。その結果、高分子鎖が長くなると、複数分子が隣り合って“協同的に吸着”すること、また、協同吸着は空きスペースを縫う“橋掛け吸着”を誘引し、吸着層形成を促進することを見出しました。さらには、吸着層に用いる高分子の長さを変えるだけで、高分子系複合材料の強靭化を実現することに成功しました。
 本成果は、異種マテリアル界面を自在に操る革新的接着技術の導出に向けた重要な知見であり、ひいては、カーボンニュートラルの実現に大きく貢献することが期待されます。
 本研究の一部は、科学技術振興機構(JST)未来社会創造事業、日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業、ならびに、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)ムーンショット型研究開発事業の支援を受けて実施されました。本研究成果は米国科学雑誌「Science Advances」オンライン版に2022年10月13日(木)に掲載されました。

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