「誰を見てどう動いたか」理論とデータから推定できる機械学習技術を開発!

~生物集団の移動軌跡から相互作用の規則を学習~

概要

 国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院情報学研究科の藤井 慶輔 准教授(理化学研究所革新知能統合研究センター客員研究員)と筒井 和詩 特任助教、大学院環境学研究科の依田 憲 教授、大学院理学研究科の田中 良弥 助教らの研究グループは、理化学研究所、科学技術振興機構(JST)、同志社大学、九州大学、西スイス応用科学大学(スイス)、基礎生物学研究所、東海大学との共同研究で、生物集団の移動軌跡から相互作用の規則、例えば「誰を見てどう動いたか」を理論とデータから推定できる機械学習注1)技術を新たに開発しました。
 本研究により、これまで概念的であった動物行動学の理論モデルに基づき、1つの機械学習モデルを用いて、多種の生物集団に柔軟に適用できる定量的な解析方法が開発されました。これにより、人間を含む様々な生物の集団移動に関する一般的な法則や、その多様性の発見へと繋げていくことが期待できます。
 本研究成果は、2021年12月6日(月)から14日(火)までオンラインで開催される、人工知能・機械学習分野における世界最高峰の国際会議の1つである「Neural Information Processing Systems 2021」(以下「NeurIPS 2021」)で発表されます。
 本研究は、2020年度から始まった科学技術振興機構さきがけ「信頼されるAIの基盤技術」、2021年度から始まった科研費学術変革領域(A)「サイバー・フィジカル空間を融合した階層的生物ナビゲーション」、2019年度から始まった科学技術振興機構CREST「数理的情報活用基盤」などの支援のもとで行われたものです。

ポイント

・生物集団の移動軌跡から、相互作用の規則を推定する手法を開発した。
・動物行動学の理論モデルと深層学習を組み合わせることで、多種の生物集団にも柔軟かつ定量的に解析できる方法を初めて提案した。
・魚や鳥の集団で有名なボイドモデル注2)や、非線形振動子の蔵本モデル注3)のシミュレーションデータを用い、相互作用の関係性をデータから正確に推定できた。
・コウモリ、マウス、鳥、ハエの集団移動データを用いて、同一の深層学習注4)モデルからそれぞれ新たな知見を得られた。

用語解説

注 1)機械学習:人間の学習能力と同様に、機械(コンピュータ)に学習能力を持たせる方法。
注 2)ボイドモデル:ボイドモデルとは、鳥や魚の群れなどをシミュレーションするためのモデルである。人工的に複雑な鳥や魚の群れの運動を生み出すには、実は個体間の相互作用に単純なルールを与えるだけで十分だという研究が数多く行われ、そのいくつかは鳥らしいモデルという意味でボイドモデルと呼ばれている。本研究では、その中でも接近・回避・並走という 3 つのルールだけで複雑な振舞いを生み出せる Couzin ら(2002)のモデルに、接近・回避・無視の関係性を与えたモデルを用いた。
注 3)蔵本モデル:ホタルの集団発光のような、相互作用のある非線形振動子集団の振舞いを記述するモデルである。今回はこのモデルのシミュレーションデータを使って、本手法により振動子同士が結合しているかどうかを当てることによる検証を行った。
注 4)深層学習:機械学習の一種で、脳内の神経細胞および神経細胞同士の結合を模して機械が学習を行う手法。

詳細

プレスリリースをご参照ください。

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