屋久島より新種の植物を発見―ヤエダケオトギリ

DNA分析によって明らかになった植物の他人の空似

農学研究院
髙橋大樹 助教

ポイント

・屋久島より、外見は非常によく似ているものの進化的起源が異なる2種類のオトギリソウ属植物を発見し、新種「ヤエダケオトギリ」と新変種「ヤクシマオトギリ」として発表。
・本成果は、屋久島に未発見の植物種がなお存在することを示すとともに、遺伝解析による隠れた生物多様性の解明が生物多様性保全に重要であることを示す。

概要

九州大学大学院農学研究院の髙橋大樹助教、東北大学大学院農学研究科の陶山佳久教授・石川直子特任准教授、兵庫教育大学大学院学校教育研究科の山本将也講師、九州オープンユニバーシティの矢原徹一研究部長(九州大学名誉教授)らの研究グループは、世界自然遺産である屋久島に、外見は非常によく似ているものの、それぞれ異なる種から進化した2種類のオトギリソウ属植物が生育していることを明らかにし、新種「ヤエダケオトギリ」と新変種「ヤクシマオトギリ」として発表しました。
両者は葉や花弁の大きさが1cmにも満たない小型の草本植物であり、屋久島の高標高域では隣接して生育している場所もあります。外見では葉と萼(がく)の腺点形態でしか識別できず、一見しただけでは区別が困難であるため、これまで同一種として扱われてきました。ところが遺伝解析の結果、2種は別種レベルで遺伝的に大きく分化しており、その進化的な起源も異なることが明らかになりました。つまり、この外見の類似性は、それぞれが独立に獲得した収れん進化(※1)の結果であると考えられます。さらに両者は染色体数も異なっており、雑種は正常な花粉や卵細胞を作ることができないため、種の境界を崩さず島内にて共存できていると考えられます。
今回の発見は、これまで長年にわたり植物調査が行われ、年間1万人以上もの登山者が訪れる屋久島の登山道沿いに、なお未発見の新種植物が存在していたことを示すものです。本成果は、屋久島の未だ十分に解明されていない生態系の豊かさを改めて示す重要な成果であると考えられます。
本研究成果は植物分類学の専門雑誌「Acta Phytotaxonomica et Geobotanica」に2026年6月30日(火)(日本時間)付で掲載されました。

発見されたヤエダケオトギリ(左)とヤクシマオトギリ(右)

研究者からひとこと

1928年に記載されて以降、およそ1世紀にわたり、屋久島の山岳域にはオトギリソウの仲間は1種のみが分布するとされてきました。本研究では近年の遺伝解析技術の発展により、これまで見過ごされてきた新種植物の存在を明らかにすることができました。本研究成果が、屋久島の生物多様性の豊かさを改めて示すとともに、その保全の重要性を考えるきっかけになれば嬉しく思います。(髙橋大樹)

用語解説

(※1)収れん進化
・・・異なる系統の生物が類似した形質を進化させること(例:鳥とコウモリの翼など)。その進化が偶然ではなく強い自然選択の結果起こったことを示唆する。

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農学研究院 髙橋大樹 助教

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