自然由来色素を用いた自己修復型スマート鮮度センサー材料を開発

食品の鮮度を色で可視化、IoT対応包装として食品ロス削減に期待

農学研究院
田中史彦教授/田中良奈准教授

ポイント

・食品廃棄は世界的な問題であり、鮮度の正確な把握が重要です。従来の方法では専門的な分析装置を必要とする場合が多く、日常的に使用できる簡便な指標の開発が求められていました。
・本研究では天然色素アントシアニン(※1)を金属有機構造体(MOF)(※2)に固定化し、安定性を向上させました。さらに自己修復性を持つハイドロゲルと組み合わせることで、耐久性と機能性を兼ね備えたスマート素材を開発しました。
・今後はセンサーの小型化や量産化を進め、食品包装への実装を目指します。IoTとの連携により、流通過程におけるリアルタイム品質管理技術への応用が期待されます。

概要

 従来、食品の鮮度を簡単に判断する方法は限られており、品質低下の把握が難しいことが課題となっていました。特に、色の変化を利用したセンサー材料は有望である一方で、天然色素は光や温度に弱く、長期間安定して使用することが困難でした。
 九州大学大学院農学研究院の田中史彦教授、田中良奈准教授らの研究グループは、食品の鮮度をリアルタイムに可視化できる新しいスマート材料の開発に成功しました。本研究では、植物に含まれる天然色素「アントシアニン」を、多孔質材料である金属有機構造体(MOF)に固定化することで、従来課題であった色素の不安定性を大幅に改善しました。これにより、光や温度の影響を受けにくい安定なセンシング材料を実現しました。さらに、この材料をセルロース由来のハイドロゲルに組み込むことで、自己修復機能を持つスマート材料を開発しました。この材料は損傷しても分子レベルで再結合し、機械的強度と機能を回復する特徴を有しています。
 開発した材料は、食品の腐敗に伴って発生するpH変化やアンモニアに応じて色が連続的に変化します。豚肉の保存試験においては、色変化がpHや揮発性塩基窒素などの鮮度指標と高い相関を示し、食品の劣化状態を直感的に判断できることが確認されました。
 本成果は、食品の品質管理を高度化し、廃棄ロスの削減に寄与する次世代スマート包装技術としての応用が期待されます。
 本研究成果は、2026年5月5日に学術誌「Chemical Engineering Journal」に掲載されました。

研究者からひとこと

天然素材とナノ材料を組み合わせることで、安全性と機能性を両立したスマート材料の実現を目指しました。食品ロス削減につながる実用化に向けた研究を今後も進めていきます。(田中史彦)

用語解説

(※1)アントシアニン:植物に含まれる天然色素で、pHにより色が変化する性質を持つ 

(※2)金属有機構造体(MOF):微細な孔を持ち、分子を安定に保持できる材料

詳細

本件の詳細についてはこちら

お問い合わせ先

農学研究院 田中 史彦 教授
農学研究院 田中 良奈 准教授

自閉スペクトラム症に関わる脳内免疫細胞を発見

農産廃棄物から高機能食品包装を開発

関連記事

  1. 脳の疾患と免疫応答(第63回 Q-AOS Bro…

    生体防御医学研究所准教授 伊藤 美菜子九州大学アジア・オセアニア…

  2. NF155抗体「ヤマサ」EIA、CNTN1抗体「…

    九州大学とヤマサ醤油株式会社 診断薬事業部による産学連携の成果九州大学(…

  3. 分子性量子ビットの量子重ね合わせ状態が化学物質に…

    工学研究院楊井 伸浩 准教授ケミカル量子センシングの実現への重要な一…

  4. 相澤伸広・准教授が第19回中曽根康弘賞奨励賞を受…

    ~相澤伸広・准教授が第19回中曽根康弘賞奨励賞を受賞されました~ …

  5. 加齢による認知機能低下を改善するグリア細胞由来分…

    ~認知症の新たな治療薬開発への展開に期待~ポイント・加齢に伴い増…

  6. 《6/18開催》令和7年度第3回I²CNER S…

    講師は津﨑 兼彰 名誉教授(国立研究開発法人物質・材料研究機構名誉フェロー)…

  7. ジェネティック・クエスト Episode1.自分…

    【九州大学病院】~ 市民向けのサイエンスカフェを開催いたします~コ…

  8. 未来共創スクール「デジタル田園都市国家構想とDX…

    ~ 九州大学大学院未来共創スクール in 熊本~ 未来共創リーダー…