左右対称な分子から「左右」が生まれる仕組みを発見

―― 金の表面で、分子が自発的に手を繋ぎ、右利き・左利き構造を作る ――

カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所
中村 潤児 特任教授

概要

金沢大学理工研究域数物科学系の吉田靖雄准教授とErlina Tik Man(研究当時:自然科学研究科数物科学専攻博士後期課程)および自然科学研究科数物科学専攻博士後期課程1年の兼子裕矢、九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所の中村潤児特任教授、インドネシア国立研究イノベーション庁のサスファン・アルマン・ウェラ教授、九州大学大学院工学研究院応用化学部門の小出太郎助教、北海道大学触媒研究所の武安光太郎准教授らによる国際共同研究グループは、本来は左右対称でキラリティ(※1)を持たない分子が、金表面上で非対称なペアを組むことで、キラリティを発現することを発見しました。

人の手のように、鏡に映すと重ならない「左右の違い」は、化学の世界では「キラリティ」と呼ばれます。キラリティは、医薬品や材料の性質を左右する重要な特徴ですが、こうした左右性がどのように生まれるのかについては、いまだ完全には理解されていません。

本研究では、本来は左右の違いを持たない分子であるフェナントロリンが、金の表面に吸着すると、分子同士が自発的に手を繋いで「右利き」「左利き」の構造を形成することを明らかにしました。今回の研究は、キラリティが必ずしも分子にあらかじめ備わっている必要はなく、「分子が2つ組になる」という小さな出来事から、自然に生まれ得ることを示しています。このような仕組みを理解することで、将来は、表面上で左右の性質を自在に制御する新しい材料や技術の開発につながることが期待されます。

本研究成果は、2026年2月15日18時(日本時間)にWiley出版『Advanced Materials Interfaces』のオンライン版に掲載されました。

用語解説

(※1)キラリティ
キラリティ(掌性)とは、右手と左手のように、鏡に映した姿と元の形が、どれだけ向きを変えても重ならないという「左右の違い」を持つ性質。このような特徴は、分子や結晶、生き物の形など、自然界のさまざまなレベルで見られる。

キラリティは、化学反応や生命の仕組みに深く関わる。キラルな分子は光学活性と呼ばれる性質を持ち、偏光した光の向きを回転させることができる。また、この左右の違いは、薬や医薬品の効き方に影響を与えることもある。

詳細

本件の詳細についてはこちら

お問い合わせ先

カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所 中村潤児 特任教授

[3/4開催]第224回アジア・オセアニア研究教育機構(Q-AOS)Brown Bag Seminar Series「九州から東方正教を考える:近代の「敗者」とポスト・リベラルの価値観」

心臓の拍動を生み出す回路の設計図を解明

関連記事

  1. 環境に関する情報開示と保全取組が経済パフォーマン…

    ~世界34ヵ国8,547社を対象としたデータ解析より関係性を明らかに~経…

  2. 半導体量子ビット2次元配列の高精度制御設計手法を…

    ~半導体量子コンピュータの実現に向けて~ポイント・半導体量子コン…

  3. 第24回GICセミナー 「OLED TV技術と未…

    九州大学 グローバルイノベーションセンター 第24回 GICセミナー…

  4. 高効率な室温りん光を示す分子液体を開発

    ―高速りん光が拓く、レアメタルフリーな柔らか発光材料―理学研究院宮田…

  5. 生物の神経回路に学ぶ超省エネIoT制御技術を確立…

    ~限られた電力制限下でのIoTデバイスの活躍に期待~ポイント1.…

  6. 少ないモータで多数の関節を巧みに操る「移動関節式…

    ロボティクスに関するトップ国際論文誌でBest Paper Awardを受賞…

  7. [1/26開催]2026 I²CNER Annu…

    “Challenge and Innovation for a Carbo…

  8. 《6/13開催》九州大学マス・フォア・インダスト…

    統計データ利活用センターによるオンサイト施設利用説明会と公的ミクロデータを用…