ESGの取り組みが企業の内在価値と市場効率性を向上させる効果を明らかに

~世界31ヵ国2,636社上場企業の国際比較研究~

経済学研究院
藤井 秀道 教授

ポイント

・非財務情報(以下、ESG)の情報開示やパフォーマンスの水準が高い企業ほど内在価値が高い傾向にある
・ESGの取り組みが進むことで企業の内在価値と株式時価総額の乖離度合いが縮小する
・これらの傾向は特に先進国で強く観察される一方で、途上国では限定的である

概要

2006年に国連支援の下で責任投資原則(PRI)が創設されて以降、投資家や資産運用者は企業のESGを投資判断に取り入れてきました。さらに、金融リスクの顕在化、COVID-19の世界的流行、気候変動などを契機に、社会的サステナビリティへの関心が高まり、ESG情報の透明性と比較可能性が強く求められています。一方、ESGと財務パフォーマンスの関係を扱う研究は多いものの、ESGが株式市場の価格形成の効率性に与える影響や、国際的な制度環境の違いを踏まえた検証は限定的です。

九州大学大学院経済学研究院の藤井秀道教授、大学院経済学府の王心雨氏、沈思語氏、九州大学都市研究センターのJun Xie助教、九州大学大学院工学研究院のAlexander Ryota Keeley准教授、馬奈木俊介主幹教授は、2015年から2022年にまでの世界31カ国における2,636社の企業データを用い、ESGの取り組みが企業の内在価値およびミスバリュエーション(企業の内在価値と株式時価総額の乖離)に与える影響を検証しました。内在価値とは、企業の資産、収益、配当などの基礎的な財務情報から経済理論に基づいて評価される企業価値です。

分析の結果、ESGは長期的に企業の内在価値を高めるとともに、ミスバリュエーションの縮小(市場効率性の向上)に寄与することが示されました。さらに、この効果は先進国でより有意に強いことが明らかとなりました。本研究の知見は、企業による持続可能な経営取り組みを後押しする政策立案に資する基礎情報として活用されることが期待されます。

本研究成果は環境経済・環境経営分野のトップジャーナルである「Business Strategy and the Environment」(2024 Impact Factor: 13.3)のオンライン速報版に、2026年1月8日(木)午後11時(日本時間)に掲載されました。

詳細

本件の詳細についてはこちら

お問い合わせ先

経済学研究院 藤井秀道 教授

“パブロフの犬”の新たな脳内機構の解明

[1/15開催]【中央図書館】第55回貴重文物講習会「グロティウス『戦争と平和の法』の400年」

関連記事

  1. 九州大学 Kyushu University

    令和4年度 九大発ベンチャー創出の支援について

    ~第6期九大ギャップファンド - 昨年度までの42件のうち、17件が起業 -…

  2. 持続可能な開発目標(SDGs)の新たな経済成長の…

    -インフラ、環境、健康、教育の政策立案に貢献-今回、九州大学大学院工…

  3. 《10/3開催》Qst Lounge #7「水素…

    「水素エネルギーと脱炭素」~水素技術の社会普及に向けて~本学社会連携…

  4. 【11/29開催】九州大学ビジネス・スクール(Q…

    ~ QBS特別選抜入試説明会のご案内 ~ 九州大学ビジネス・スク…

  5. 遊泳微生物における新たなキラル集団運動現象を発見…

    遊泳微生物における新たなキラル集団運動現象を発見 水中を泳ぐ微生物や…

  6. 非典型的開始コドンからの翻訳開始機構を解明

    -がん等の治療法開発に期待- 九州大学生体防御医学研究所の中山 敬一…

  7. 室温程度の環境熱を活用した新機構有機熱電デバイス…

    有機エレクトロニクスが切り拓くクリーンエネルギー発電工学研究院安達 …

  8. 鉄系高温超伝導体で世界最高の超伝導電流を実現!

    ~強磁場発生用磁石応用へ前進~ポイント・強磁場中で大きな超伝導電…