銅を“鉱石レベル”まで高濃縮する新規微生物を発見

-鉄酸化細菌による銅の濃縮機構を解明し、バイオマイニングへ期待-

理学研究院
濱村 奈津子教授

ポイント

・鉱山跡地から銅(用語解説1)を高濃縮する鉄酸化細菌(用語解説2)を発見
・分離株は銅を鉱石レベルまで高濃縮
・複数の銅排出遺伝子群に支えられた堅牢な銅耐性を保有
・独立栄養菌であり“カーボンニュートラル型”の銅回収技術へ応用できる

概要

愛媛大学大学院農学研究科 光延聖 教授、谷本和也 大学院生は、理化学研究所 加藤真悟 上級研究員、日本原子力研究開発機構 徳永紘平 研究員、九州大学大学院理学研究院 濱村奈津子 教授との共同研究によって、銅を“鉱石レベル”まで濃縮固定できる新規鉄酸化細菌を初めて純粋分離(用語解説3)し、その強力な鉄酸化作用が銅の高濃縮を引き起こす仕組みを明らかにしました。本成果は、微生物を利用した有価金属回収(バイオマイニング)や環境浄化技術の開発に繋がる重要な結果です。

なお、本成果は、2025年11月30日付で米国Wiley社から刊行された国際科学誌『Environmental Microbiology』に掲載されました。

用語解説

1. 銅
人類が利用してきた最も重要な金属資源の一つであり、その高い電気伝導性、熱伝導性、加工性から、現代社会の産業基盤を支える有価金属です。近年は脱炭素社会の進展により、電動化・電力網強化が世界的に加速し、それに伴って銅の需要は急増し、銅の国際価格も高騰し続けています。新規鉱山探査の停滞などから、銅は「今後最も不足する金属資源」のひとつと考えられており、安定供給や効率的な回収技術の確立が国際的な課題となっています。また、銅には強力な抗菌・殺菌作用があるため、細菌やウイルスを短時間で不活化できることが知られています。この特性は銅回収技術へ微生物を応用する上で大きなボトルネックとなっています。

2. 鉄酸化細菌
鉄酸化細菌は、鉄(Fe2+)を酸素で酸化してエネルギーを得る独立栄養性の細菌(バクテリア)であり、主にpH中性から酸性の環境に生息します。
Fe2+ + 0.25O2 + 2.5H2O → Fe(OH)3↓ + 2H+
電子供与体  電子受容体      酸化鉄鉱物の沈殿

鉄を酸化して得たエネルギーを用いてCO2から有機物を合成し、自らの生育に利用します。土壌、堆積物、地下水などの環境に広く生息しており、環境中で鉄の循環に重要な役割を果たしています。鉄酸化細菌によって生成される鉄(III)酸化物は表面積が大きく(1グラム当たり100~200 m2)、重金属の固定化を通じて鉱山排水や地下水の環境浄化にも応用される有用微生物です。一方で、多くの鉄酸化細菌は実験室で純粋分離することが難しい微生物に分類されています。

3. 純粋分離
環境中に数千種、数万種も存在する微生物の中から、標的である1種の微生物のみを分離・増殖させる技術です。これにより、ゲノム解析だけではわからない微生物の生理・代謝・生態を詳細に調べられます。純粋分離は通常、選択培地を用いて行われ、得られた集積微生物の希釈を繰り返すことで達成されます。環境微生物の90%以上は未培養(培養条件がわかっていない状態)であるため、純粋分離は微生物の代謝研究や工学応用において強力な研究アプローチです。

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理学研究院 濱村奈津子 教授

新しいRNA編集技術「RECODE」を開発

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