~持続可能な宇宙居住への第一歩~
理学研究院/農学研究院
松田 修 助教 / 久米 篤 教授
ポイント
・宇宙でも生き延びたコケ:国際宇宙ステーション(ISS)船外で9か月間の曝露後も生存を確認。
・極限環境耐性の鍵は「胞子」:紫外線、極低温、真空下でも胞子の高い生存率を確認。
・月・火星での生態系構築に貢献:植物生産や生命維持技術への応用に期待。
概要
北海道大学大学院生命科学院のメンチャンヒョン博士研究員、同大学大学院理学研究院の藤田知道教授、宮城大学の日渡祐二教授、中村恵太博士課程学生、九州大学の松田 修助教、久米 篤教授、福岡工業大学の三田 肇教授、筑波大学生命環境系の富田・横谷香織講師(研究当時)、東京薬科大学の横堀伸一准教授、山岸明彦名誉教授からなる研究グループは、モデルコケ植物「ヒメツリガネゴケ」の胞子(種子植物の「種子」に相当する生殖構造体)が実際の宇宙空間で長期間生存できることを世界で初めて実証しました。
国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟に設置された船外実験装置を用いてヒメツリガネゴケの胞子を含む胞子体(sporophyte)*1を約9か月間宇宙空間に曝露しました。地上に回収後、発芽試験を行った結果、80%以上の胞子が正常に発芽することが明らかになりました。
これは、コケ植物の胞子が実際の宇宙環境で生存し得ることを示した世界初の報告であり、今後、持続可能な宇宙生態系の構築や生物を利用した生命維持システム(BLSS:Bioregenerative Life Support System)*2の開発に向けた新たな可能性を拓くものと期待されます。
なお、本研究成果は、日本時間2025年11月21日(金)公開のiScience誌(セル・プレス刊行)にオンライン掲載されました。
用語解説
*1 胞子体(sporophyte)
コケ植物の生活環のうち、受精後に形成される二倍体(2n)の世代。茎の先端に形成される蒴(さく、sporangium)の中に減数分裂により作られた多数の胞子(一倍体=1n)を含み、成熟すると胞子を放出して次の世代を生じる。今回の研究では、この胞子体をまるごと宇宙空間に曝露して耐性を調べた。
*2 BLSS(Bioregenerative Life Support System)
生物再生型生命維持システムのこと。植物や微生物など生物の働きを利用して、酸素の供給、二酸化炭素の除去、水や栄養の再生、食料の生産を行う閉鎖循環型の生命維持装置。宇宙船や月・火星基地などでの長期滞在を可能にする基盤技術として注目されている。
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