職場の孤立リスク評価への新たなアプローチを提案

~オンラインチャットデータから潜在的リスク評価の可能性を示唆~

システム情報科学研究院
荒川 豊 教授

ポイント

・オンラインチャット情報が潜在的な孤立リスク評価の指標として活用できる可能性を初めて検証
・「貢献度」と「隣接度」という2つの新しい指標を定義し、組織内コミュニケーションを分析
・オンラインでのコミュニケーション量の少なさが必ずしも孤独感に直結しないことを科学的に実証
・一方で、孤独感の少ない人ほどオンライン上での関係性が強いことを発見

概要

リモートワークやハイブリッドワークの普及により、職場はオンラインチャットツールに依存するようになりました。しかし、従来は孤立している従業員をどのように特定するのかが明らかではなく、デジタル空間における孤立リスク評価手法の解明が望まれていました。

この課題に対し、本研究はオンラインチャット情報が職場における孤立リスク評価の指標として活用できる新たな仕組みを解明しました。

九州大学大学院システム情報科学研究院の荒川豊教授らの研究グループは、Slackのようなチャットツールのデータを分析し、貢献度と隣接度という2つの新しい指標による評価システムを開発しました。その結果、オンラインコミュニケーションの活発さと対面での社会的つながりの強さに一定の関係性があることを明らかにしました。さらに、九州大学研究室の48名を対象とした実証研究において、国際的に用いられるUCLA孤独感尺度を利用してシステムの有効性を科学的に検証しました。その過程で、オンライン上のコミュニケーション量の少なさが必ずしも孤独感に直結するわけではないことも発見しました。

今回の成果は、従来の物理的環境整備を中心とした「働きやすい職場づくり」に対し、デジタル空間における居心地の良い情報環境構築という新たな視点を提供します。これにより、包摂的な組織運営の実現に役立つとともに、従業員一人ひとりがデジタル空間においても相手を気遣うデジタルリテラシーの向上にも貢献することが期待されます。

なお、本研究成果は日本の学術誌「Journal of Information Processing」Vol.33に2025年10月15日(水)午前0時(日本時間)に掲載されました。

研究者からひとこと

コロナ禍を経て、多様な働き方が進みオンラインツールの導入も広がっていますが、利便性が増した反面、お互いの顔が見えないことによる弊害も起きています。そのため、国内外の大手企業においてRTO(Return To Office)の動きも生まれています。本研究は、対面では把握できていた孤独感や孤立状態などをデジタルフットプリントから推測できないか検討したものです。現時点では発見できたとはいえませんが、今後研究を進めて指標化していきたいと考えています。

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システム情報科学研究院 荒川 豊 教授

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