ナノ触媒の可能性を解き放つ

~簡単な超音波処理が水浄化を変える~

工学研究院
金子 賢治 教授

ポイント

・超音波処理により高性能なコア-シェル型ナノ触媒の開発に成功
・超音波処理のナノ構造形成に対するその影響を原子レベルで世界で初めて解明
・ナノ材料設計における新たな機能性や応用の可能性を切り拓く超音波処理に期待

概要

コア-シェル型ナノ触媒は、中心部(コア)の金属によって粒径を安定化させつつ、外側(シェル)の金属の利用効率を高めることで、優れた性能と耐久性を兼ね備えた触媒材料です。これらは、持続可能な社会の実現に向けて、環境浄化やエネルギー変換などの分野で重要な役割を果たすと期待されています。

九州大学大学院工学研究院の金子賢治教授、長崎大学大学院総合生産科学研究科のAhn T.N. Dao准教授、韓国科学技術研究院の李厚俊研究員らによる国際共同研究グループは、環境浄化や高性能触媒用途に向けた「コア-シェル型ナノ触媒」の量産的かつ効率的な合成に成功しました。これまで、触媒の反応活性はその表面構造に大きく依存することが知られていましたが、ナノレベルでの構造形成メカニズムの詳細は未解明でした。本研究では、高分解能走査型透過電子顕微鏡(※1)とエネルギー分散型X線分光法(※2)や電子線トモグラフ法(※3)を組み合わせることで、金(Au)コアの周囲に樹枝状の白金(Pt)シェルを形成する過程を可視化。さらに、超音波処理によってこの構造形成を効果的に制御することに成功しました。

超音波処理は、低コストで広く利用可能な材料合成技術として注目されてきましたが、原子スケールでの構造形成への影響は十分に理解されていませんでした。今回の成果は、ナノ材料設計における新たな機能性と応用可能性を示すものであり、次世代高性能触媒の開発に向けた重要な一歩となります。

構造形成に対するその影響は、まだ十分に解明されていません。今回の報告は、ナノ材料設計における新たな機能性や応用の可能性を切り拓く、次世代高性能触媒の設計への応用に貢献すると期待される魅力的な研究領域です。

今後は、超音波処理法の制御によるナノ構造形成挙動の解明が見込まれます。本研究成果は、イギリス科学誌「Scientific Reports」オンライン版に2025年8月12日(火)に掲載されました。

研究者からひとこと

超音波処理による複雑なナノ構造の形成過程を解明するために、高性能な走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いて、金(Au)をコアとし、白金(Pt)の樹枝状ナノ粒子がシェルとして形成される機構を明らかにしました。興味深いことに、超音波処理を行わなくても薄いPt層は形成されますが、特徴的な樹枝状構造は超音波処理によってのみ現れることを確認しています。

この超音波処理法は、水系環境で実施可能でエネルギー効率が高く、スケーラブルな製造にも適しているという利点があります。また、得られた樹枝状ナノ粒子は高い表面積と豊富な活性点を持ち、水中の有機汚染物質の分解に有効な触媒として、環境浄化技術への応用が期待されます。 (金子賢治教授)

用語解説

(※1) 高分解能走査型透過電子顕微鏡(STEM)
透過電子顕微鏡法(TEM)の一種。通常のTEMは、試料の形状、大きさ、結晶方位などの構造的な情報を与える。これに対して走査型透過電子顕微鏡は、TEMに走査機能を組み合わせることにより、細く絞った電子線を試料に照射することで、局所領域の解析が可能となる。

(※2) エネルギー分散型X線分光法(EDS)
電子線やX線を試料に照射した際に発生する特性X線を検出し、そのエネルギーを分析することで、試料中の元素を特定するだけでなく、定量する観察手法。

(※3) 電子線トモグラフ法
TEMやSTEMを用いて試料の三次元構造を可視化する手法です。ナノスケールでの立体構造解析に非常に有効で、材料科学、生物学、ナノテクノロジーなどの分野で広く利用されている。

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工学研究院 金子賢治 教授

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