種の保存法指定種ハカタスジシマドジョウの飼育下での産卵の撮影に成功

知られざる雌雄の行動が明らかに

九州大学大学院生物資源環境科学府博士課程3年の永江栞奈氏および同農学研究院の鬼倉徳雄教授の研究チームは、博多湾流入河川にのみ分布する、九州固有亜種ハカタスジシマドジョウを飼育下で産卵させ、その行動の動画撮影に成功しました。この魚は、平成31年2月に環境省の絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律で国内希少野生動植物種に、また令和3年4月に福岡県指定希少野生動植物種に指定されており、現在、マリンワールド海の中道で系統保存されています。ホルモン注射で産卵を誘発させ、飼育下で繁殖させること自体は、マリンワールドでも行われていますが、産卵行動の一部始終を動画で撮影したのは初めてです。
 
 魚類があまり警戒しない赤色LEDライトを使うことで、夜間の行動を撮影できました。産卵行動自体は、他の近縁のシマドジョウ類とほぼ同じでしたが、1~2ペアが3時間に17回も産卵行動を行い、そのうち13回で放卵放精を確認できました。そして、オスがメスに巻き付き、放卵放精を終えて、オスとメスが再び離れるまでの時間が、わずか2秒弱であったこと、最終的に約1,000粒の受精卵が得られたことなど、生態学的に興味深い、そして、保全学的に有益な知見が、撮影された動画の解析から明らかとなりました。その詳細については、国内和文オープンアクセス誌Ichthy(57巻:8-14)に掲載されています。
 
 今回の産卵実験は、環境省・(独)環境再生保全機構の環境研究総合推進費(JPMEERF20254003)の研究の一環として行っており、今後、成長した個体は、共同研究を行う同農学研究院の太田耕平教授・小北智之教授・CHAKRABORTY TAPAS助教に渡され、生殖幹細胞での系統保存や希少魚の遺伝的健全性の評価など、研究開発にも使われます。現在、本亜種が生息する既知の河川は2つしかありませんが、今回、九州大学で繁殖させた個体は、マリンワールドの系統保存個体とは異なる河川のものであり、希少種の複数系統の域外保全にも寄与する成果です。

研究者からひとこと

 私たちの研究チームでは、同じく種の保存法に指定されるセボシタビラも系統保存していますが、系統保存には時間と労力がかかり、また、飼育下での交配の繰り返しは遺伝的な質の低下を招く恐れがあります。今回、繁殖で得られた個体が順調に育ち、より効率的な系統保存のための技術革新に資する研究材料としても寄与することを期待します。

お問い合わせ

大学院農学研究院 鬼倉 徳雄 教授 
電話:0940-52-0163
FAX:0940-52-0190
Mail:onikura★agr.kyushu-u.ac.jp
※メールアドレスの★を@に変更してください。

九州大学ホームページもご参照ください。

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