プラズマ照射システインが心臓の虚血耐性を高める

薬学研究院
西田 基宏 教授

ポイント

・プラズマ照射システイン液を心筋細胞に与えると虚血ストレスに対して強くなることを見出しました。
・低酸素状態の心筋細胞では、硫黄代謝のバランスが崩れる(超硫黄分子から硫化水素への代謝が亢進する)ことでミトコンドリア(※1)でのエネルギー産生が阻害されることを見出しました。
・プラズマ照射システイン液を低酸素状態の心筋細胞に加えることで硫黄代謝のバランスが正常化し、エネルギー産生能が回復することを見出しました。

概要

 プラズマ(※2)とは、固体、液体、気体に次ぐ物質の第4の状態で、高いエネルギーによって原子から電子が分離することで、電子とイオンに分かれている状態です。近年、常温大気圧でプラズマを生成することが可能となり、高い化学反応場を生み出すプラズマを利用した医療や農学分野への応用研究が進められています。今回、自然科学研究機構生理学研究所/生命創成探究センター(ExCELLS)の西村明幸特任准教授と西田基宏教授(九州大学大学院薬学研究院と兼任)らの研究グループは、東北大学などとの共同で、含硫アミノ酸の1つであるシステインにプラズマ照射を行った溶液には心臓を虚血ストレスから保護する効果があることを明らかにしました。酸素濃度が低下した虚血状態の心筋細胞ではミトコンドリアのエネルギー産生能が低下します。この虚血心筋細胞にプラズマ照射システイン液を与えると、ミトコンドリアのエネルギー産生能が改善されることがわかりました。本研究は、低温大気圧プラズマ技術の生命科学や医療への応用・活用を目指す「プラズマバイオコンソーシアム」のプロジェクトとして行われ、その成果がRedox Biology誌(2025年2月号)に掲載されました。

用語解説

(※1)ミトコンドリア
細胞内においてエネルギー産生を担っているオルガネラ。電子伝達系でエネルギーを生み出している。

(※2)プラズマ
固体、液体、気体に次ぐ第4の物質状態であり、電子とイオンが自由に運動できるようになった状態。テレビや蛍光灯、半導体など産業界では様々な活用が進んでいる。

お問い合わせ先

薬学研究院 西田基宏 教授

詳細

本研究の詳細はこちらをご参照ください。

【12/18開催】言語文化研究院講演会 「Words of Japanese Origin in the Oxford English Dictionary」

「ナイスステップな研究者」に平松光太郎准教授が選ばれました

関連記事

  1. 医学系学府 白石 千瑳さんが2024年度「ロレア…

    九州大学大学院医学系学府にて博士号(医学)を取得した白石 千瑳さんが2024…

  2. 閉経後骨粗しょう症と体重増加を引き起こす共通メカ…

    歯学研究院自見 英治郎 教授抗酒薬ジスルフィラムは閉経後骨粗しょ…

  3. 原発性サルコペニアと末期腎不全に関連する筋萎縮の…

    ~マルチオミクス解析による新たな知見~九州大学病院瀬戸山 大樹 助教…

  4. 《8/21開催》令和7年度第5回I²CNER S…

    講師はSushanta Mitra教授(ウォータールー大学、カナダ)です…

  5. アーキアのDNA複製酵素がプライマー合成から鎖伸…

    〜アーキアのDNA複製機構の解明に期待〜 九州大学大学院農学研究院の…

  6. ヒト頭髪から細菌を分離し特異な炭素資化性を発見

    農学研究院田代 幸寛 准教授ポイント・近年、人の頭髪表面には…

  7. 手足をつくる四肢前駆細胞を産むリプログラミング法…

    ~ 四肢欠損治療技術開発への光明となる可能性大 ~ポイント・…

  8. 老化・自己免疫疾患で蓄積する病原性B細胞の誘導の…

    ~難病「全身性エリテマトーデス」などの自己免疫疾患治療に新たな道を拓く発見~…