発育性股関節形成不全に関わる遺伝子座を同定

-世界最大規模のゲノム解析による遺伝因子の解明-

医学研究院
吉野 宗一郎 助教

概要

理化学研究所(理研)生命医科学研究センターゲノム解析応用研究チームの吉野宗一郎客員研究員(九州大学大学院医学研究院整形外科学分野助教)、寺尾知可史チームディレクター(静岡県立総合病院免疫研究部長、静岡県立大学特任教授)、骨関節疾患研究チーム(研究当時)の池川志郎チームリーダー(研究当時)、九州大学大学院医学研究院整形外科学分野の中島康晴教授(同大学病院整形外科教授)、同大学病院リハビリテーション科の山口亮介助教らの共同研究グループは、大規模な全ゲノム関連解析(GWAS)[1]を行い、発育性股関節形成不全(Developmental Dysplasia of the Hip:DDH)とこれに続発する変形性股関節症(Hip Osteoarthritis:OA)の発症に関わるゲノム上の新しい疾患感受性領域(遺伝子座)[2]を同定しました。

本研究成果は、DDHやOAの病態のさらなる解明と、新しい治療法や予防法の開発に貢献すると期待されます。

今回、共同研究グループは、合計で1,085人の日本人DDH患者と、770人のイギリス人DDH患者の両ゲノムデータを利用して、DDHとしては世界最大規模のGWASメタ解析[3]やサブグループ解析[4]を行い、合計9個の疾患感受性領域(うち7個は新規)を同定しました。さらに、OA GWAS国際メタ解析の公開データを用いてOAとDDHのメタ解析や相関解析を行い、両者で共有された遺伝因子が存在する一方で、異なる遺伝的基盤が存在することを明らかにしました。

本研究は、科学雑誌『Bone Research』オンライン版(2026年3月31日付:日本時間3月31日)に掲載されました。

補足説明

[1] 全ゲノム関連解析(GWAS)
疾患の感受性領域([2]参照)を見つける方法の一つ。ヒトのゲノム全体を網羅する遺伝子多型([5]参照)を用いて、疾患を持つ群と疾患を持たない群とで遺伝子多型の頻度に差があるかどうかを統計学的に検定する方法。検定の結果得られたp値(偶然にそのようなことが起こる確率)が低いほど、相関が高いと判定できる。GWASはGenome-Wide Association Studyの略。

[2] 疾患感受性領域(遺伝子座)
疾患の発症に関連している染色体上の領域のこと。

[3] メタ解析
独立して行われた複数の研究の統計解析結果を合算する統計学的手法。

[4] サブグループ解析
診療現場においては、DDHは乳児期の股関節脱臼から成人期の寛骨臼形成不全を包括する一連の股関節形態異常とされる。股関節脱臼と寛骨臼形成不全が一連の形態異常であればこれらの遺伝的基盤は類似するはずという前提で、これを確かめるべく股関節脱臼と寛骨臼形成不全をそれぞれサブグループとして定義した解析も行った。

[5] 遺伝子多型
ヒトゲノムは30億塩基対のDNAから成るが、個々人を比較するとそのうちの0.1%の塩基配列に違いがある。これを遺伝子多型という。

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医学研究院 吉野宗一郎 助教
医学研究院 中島康晴 教授
九州大学病院 山口亮介 助教

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