新しい(2-エキソメチレン型)擬複合糖質を開発

~ 触媒的な合成法確立と生物活性分子としての有用性の実証に成功 ~

ポイント

・天然型複合糖質の構造をわずかに改変したアナログ分子(擬複合糖質)は、有用な生物機能分子として期待できますが、そのポテンシャルの検証は遅れていました。
・今回、新たに設計した2-エキソメチレン型擬複合糖質を触媒的・立体選択的に合成する手法を確立し、さらにそのユニークな生物活性を見出しました。
・今後、天然型複合糖質の生物活性を変えられる2-エキソメチレン型擬複合糖質は、興味深い機能をもつ生物活性分子として用いられることが期待されます。

概要

 天然型複合糖質の構造をわずかに改変したアナログ分子(擬複合糖質)の開発は、複合糖質を起点とする創薬研究において極めて重要ですが、合成の煩雑さなどの理由から、限られた検討にとどまっていました。
 九州大学大学院薬学研究院の平井剛教授を中心とする研究グループ(大阪大学微生物病研究所の山崎晶教授ら、順天堂大学健康総合科学先端研究機構の秋山央子特任助教、岐阜大学応用生物科学部の石田秀治教授ら)は、従来とは異なる特徴をもつ2-エキソメチレン型擬複合糖質を設計し、これを触媒反応によって効率的に合成しました。従来法では、生成しうる2種の立体異性体を選択的に合成するには、それぞれに適した原料を調製する必要がありましたが、本成果では触媒の配位子を選択することで両異性体の立体選択的合成に成功しました。さらに合成したα-擬グルコシルセラミドが、ナチュラルキラーT(NKT)細胞のT細胞抗原受容体を活性化せず、C型レクチン受容体Mincleを選択的に、かつ天然型α-グルコシルセラミドよりも効果的に活性化することを見出しました。
 本研究成果は、ドイツ化学会が出版する国際誌「Angewandte Chemie International Edition」のオンライン版にて2023年4月27日に掲載されました。

詳細

詳細は九州大学プレスリリースをご参照ください。

反応における官能基情報を評価する「官能基評価キット」を開発

安達千波矢主幹教授が紫綬褒章を受章

関連記事

  1. 重力の実在性の破れを検証する方法を提案

    ~量子重力への新しいアプローチ~ポイント・物理学最大の未解決問題…

  2. 非典型的開始コドンからの翻訳開始機構を解明

    -がん等の治療法開発に期待- 九州大学生体防御医学研究所の中山 敬一…

  3. カーボンナノリングのキーホルダー式固定化法の開発…

    〜金属イオンとの相互作用による機能性材料の創製に期待〜ポイント…

  4. ヘテロナノグラフェン構造を用いた高効率・狭帯域青…

    〜 有機EL材料への実用化を目指す 〜 茨城大学の吾郷友宏准教授、九…

  5. 石川邦夫教授が紫綬褒章を受章

    ~歯学研究院の石川 邦夫(いしかわ くにお)教授が、令和6年春の紫綬褒章を受…

  6. ムーンショット型研究開発事業に山西陽子教授(工学…

    ムーンショット型研究開発事業に山西陽子教授(工学研究院)のプロジェクトが新規…

  7. 「はやぶさ2」ミッションによる世界初の小惑星から…

    〜リュウグウからのたまて箱〜概要 国立研究開発法人宇宙航空研究開…

  8. 第18回有機光エレクトロニクス産業化研究会

    「クロスリアリティ(XR)関連技術の最前線 ~ 有機EL技術活用の可能性を…