顔面発症感覚運動ニューロノパチー(FOSMN)の臨床像を解明

早期診断・治療・社会資源導入につながることが期待される

ポイント

・顔面発症感覚運動ニューロノパチー(FOSMN)は徐々に全身の感覚・運動障害が進行する神経疾患ですが、認知度が低く国内における患者数や症状の特徴などが十分にわかっていません。
・本研究では、全国のFOSMN患者さんの臨床情報を収集・解析し、日本におけるFOSMNの患者数や臨床像を明らかにしました。
・これにより、FOSMNの特徴や経過をふまえ、より早期の診断、適切なタイミングでの治療や社会資源の導入に役立つことが期待されます。

概要

 顔面発症感覚運動ニューロノパチー(Facial Onset Sensory and Motor Neuronopathy、FOSMN)は、顔面もしくは口腔内の感覚障害から発症し、感覚障害が嚥下・構音障害などの運動症状とともに次第に下肢に向かって広がっていく症候群です。非常に稀な症候群と考えられていますが、症状が複雑で多くの診療科にまたがって受診している場合があり、確定診断に至りにくく、未診断例も多いことが予想されます。世界でも100例程度の報告しかないため、FOSMNの有病率や臨床像はまだ十分に明らかになっていませんでした。一方、症状は重篤で、筋萎縮性側索硬化症(※1)に近い症候群であると考えられており、病気の進行とともに体が不自由になりますが、病気が十分に認知されておらず、社会福祉サービスなどが整っていません。

九州大学大学院医学研究院神経内科学分野の山﨑亮准教授、医学系学府博士課程4年の江千里らの研究グループは、国内初のFOSMN症候群の全国臨床疫学調査(※2)を実施し、国内における推計患者数、FOSMNの詳細な患者像や免疫治療への反応性などを明らかにしました。更に、世界で初めてFOSMNの病型分類を行い、FOSMNの中でも特に進行の早い一群があることを発見しました。国内におけるFOSMNの臨床像が明らかになったことで、疾患の周知、早期診断や適切なタイミングでの治療介入、社会福祉サービスの導入が可能となることが期待されます。

本研究成果は、世界神経学会の公式な国際学術誌「Journal of the Neurological Sciences」に2024年3月23日(土)に掲載されました。

用語解説

 (※1) 筋萎縮性側索硬化症…大脳及び脊髄運動神経の進行性の変性により全身の筋力低下、嚥下・構音障害、呼吸不全をきたす神経難病の1つ。

(※2) 全国臨床疫学調査…ある疾患の国内における患者数や分布、病気の実態などを理解するために、日本全国を対象として行われる調査。

研究に関するお問い合わせ先

医学研究院 山﨑 亮 准教授

詳細

本研究の詳細は九州大学プレスリリースをご参照ください。

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