微生物がつくるナノ粒子がウラン鉱山の鉱水から放射性核種を取り除く機構を解明

微生物がつくるナノ粒子がウラン鉱山の鉱水から放射性核種を取り除く機構を解明

 九州大学大学院理学研究院の宇都宮聡准教授、理学府修士課程の横尾浩輝大学院生(研究当時)、沖拓海大学院生(修士2年)らの研究グループは、岡山県人形峠ウラン鉱山に生息する微生物が生成するナノ粒子とバリウム(放射性ラジウムと挙動が類似した安全な元素)の反応を実験的に研究して、鉱山鉱水に含まれる放射性核種であるラジウムを選択的に吸着、共沈するメカニズムを明らかにしました。本研究は、筑波大学、東京工業大学、日本原子力研究開発機構、米バージニア工科大学との共同研究の成果です。
 岡山県に位置する人形峠ウラン鉱山(図1a)の鉱水中には放射性ラジウムが最大1.6×10-3 Bq/cm3含まれますが、日本原子力研究開発機構で管理されている区域内で滞留することで、濃度が大幅に減少しています。これには区域内に生息するマンガン酸化菌がつくるマンガン酸化物(図1b)がラジウムを吸着する反応が寄与していると考えられていますが、そのメカニズムは分かっていませんでした。本研究では、人形峠ウラン鉱山に棲息する真菌がつくるマンガン酸化物ナノ粒子の特性評価を行うとともに、そのマンガン酸化物ナノ粒子に対してラジウムと化学的挙動が類似する代替元素のバリウムを用いた吸着・共沈実験を行って、その相互作用メカニズムを調べました。
 X線回折によって微生物由来マンガン酸化物ナノ粒子はバーネス鉱の構造を持つことが分かりましたが、無機的に合成したバーネス鉱と比較すると、マンガンと酸素でつくられる層構造の積層数が少ないことが分かりました(図2a)。電子顕微鏡下では針状のナノ粒子(数nm幅)が放射状に集まって球体の組織(~1μm)をしており(図2b,c)、電子スピン共鳴測定から多くの空孔が層内に存在することが分かりました。
 微生物由来バーネス鉱に対するバリウムの吸着実験の結果、最大吸着量は1.1 mmol/gと見積もられ、無機合成したバーネス鉱に対する最大吸着量の約2倍程度となりました。また、微生物由来バーネス鉱に対する吸着の見かけの分配係数は103.8 L/gと計算されて、これは人形峠ウラン鉱山でこれまでに報告されている貯水池堆積物に対するラジウムの分配係数103.9 L/gと近い値になりました。これにより、堆積物中のマンガン酸化物は1.3重量%程度と低いものの、鉄酸化物などの他の構成鉱物と比較すると分配係数が大きいために、ラジウムの固定には微生物由来バーネス鉱が重要な役割を果たしていることが示唆されます。
 また、吸着したバリウムに対してL3吸収端の広域X線吸収微細構造解析を行ったところ、動径分布関数に第二近接マンガン原子に由来するピークが見られ、吸着したバリウム原子はマンガン酸化物の層間の空孔ではなく層上に内圏錯体を形成していることが示されました(図3)。また、マンガン酸化物が微生物によって形成される時にバリウムを取り込ませた(共沈)試料でも、層間で同様の吸着形式をとることが分かりました。一方、共沈でとりこまれたバリウムの脱離は吸着されたバリウムよりも1.4倍遅く進むことも分かりました。
 本研究は、ウラン鉱山に棲む微生物がナノ粒子を形成してどのように放射性核種ラジウムの固定に影響を与えるかを知るために、その核心となる分子スケール反応の原理を明らかにすることができました。この知見は他のウラン鉱山汚染サイトにおいても微生物が寄与する自然の浄化機構を理解するために役立つと期待されます。
 本研究はJSPS科研費(JP16K12585, JP16H04634)の支援を受けて行われたものです。
 本研究成果は、2021年10月4日(月)に国際誌「Gondwana Research」に掲載されました。

詳細

九州大学プレスリリースをご参照ください。

SDGs Design International Awards 2021

霜月ランチタイム交流会「女性と男性が共に健康で暮らすために」生殖病態生理学の専門家に男女の更年期障害について共に聞く

関連記事

  1. [5/20開催]第231回アジア・オセアニア研究…

    西田 紘子 教授(芸術工学研究院 )九州大学アジア・オセアニア研究教…

  2. 九大伊都キャンパスにて電動三輪モビリティ無料シェ…

    〜カーボンニュートラル社会の実現に向けた産学官連携 実証実験〜令…

  3. ウクライナから避難した学生・研究者へ博多旧市街地…

    ~ウクライナからの避難学生・研究者へ博多旧市街地の歴史体験ツアーを実施しま…

  4. 【6/15開催報告あり】「第12回 九州大学芸術…

    九州大学芸術工学部施設公開:大人から子どもまで幅広く楽しめる内容です!…

  5. 豪州クイーンズランド大学(UQ)の学生受入れ実施…

    ~将来の日豪の架け橋となることを期待~令和6年6月28日(金)~7月12…

  6. 【8/1開催】 高等研究院若手研究者交流セミナー…

    ~異分野コミュニケーションの在り方について、参加者全員で考えるための機会とし…

  7. NTTと九州大学、世界最大規模の開発データに基づ…

    ~次世代のソフトウェア開発ワークスタイルの構想に向け、「OSSの神話」を検…

  8. 植物の細胞壁を作り変える新機構を解明

    ~収穫に適した形態や乾燥ストレス耐性向上など植物の改良に新たな道~芸術工…