口腔悪性黒色腫の顎骨浸潤機構を解明!

~口腔悪性黒色腫の新たな診断や治療に期待~

 悪性黒色腫(メラノーマ)は皮膚がんの一つであり、1年間で100万人あたり約10~20人が新たに診断されています。中でも、口腔の悪性黒色腫は、悪性黒色腫(メラノーマ)全体の0.2~8%を占める非常に稀な腫瘍です。口腔悪性黒色腫はメラニン色素を生成するメラノサイトから発生し、顎骨に浸潤しやすく、予後不良な(5年生存率8〜15%)悪性腫瘍ですが、顎骨に浸潤する分子メカニズムは不明です。
 九州大学歯学研究院の自見英治郎教授、森悦秀教授、清島保教授らの研究グループは、骨に含まれる骨形成因子(Bone Morphogenetic Proteins : BMP)が口腔悪性黒色腫を骨に浸潤しやすい形質にすることを発見しました。これまで、悪性黒色腫がBMPsを産生することや、BMPの受容体を発現していることが報告されています。そこで、ヒト悪性黒色腫の組織切片をBMPシグナルの伝達分子Smad1/5の活性型(リン酸化Smad1/5)を認識する抗体を用いて免疫染色を行ったところ、黒色腫細胞の核内でリン酸化Smad1/5が示されました。このことは、リン酸化Smad1/5が核内で転写因子として機能していることを示します。一方、良性の黒子ではリン酸化Smad1/5は陰性もしくは弱陽性でした。次に、B16マウス(※1)およびA2058ヒト悪性黒色腫細胞株(※2)をBMP2、BMP4、またはBMP7で刺激すると、細胞形態が紡錘形に変化し、細胞接着分子であるE-カドヘリンの発現抑制、およびN-カドヘリンの発現上昇を伴う上皮-間葉移行が起こりました。さらに、細胞外基質を分解するマトリックメタロプロテアーゼの発現が亢進しました。これらの効果は、Smad1/5シグナル伝達の特異的阻害剤であるLDN193189によって抑制されました。構成的に活性化されたBMPⅠ型受容体(ALK3)を発現するB16細胞をマウスに移植すると、骨を破壊する破骨細胞が多数誘導され、対照のB16細胞移植群と比較して頬骨弓の破壊を増強しました。以上の結果より、BMPシグナルの活性化は、悪性黒色腫に遊走、浸潤能を獲得させ、骨に浸潤しやすくすると考えられます。
 本研究は、OBT研究センタープロジェクト経費の支援を受け実施されました。また、本研究成果は、米国学術雑誌Laboratory Investigationで令和3年9月9日(金)にオンライン公開されました。(DOI: 10.1038/s41374-021-00661-y.)

用語解説

(※1)B16 マウス悪性黒色腫細胞株:B16 マウス悪性黒色腫細胞株は C57BL/6 マウス皮膚が原発の悪性黒色腫から樹立された細胞株。口腔悪性黒色腫由来の細胞株が存在しないため、一般的に広く実験に使用される B16 マウス悪性黒色腫細胞株を使用し、本研究の細胞移植実験では、同系統の C57BL/6 マウスに移植した。
(※2)A2058 ヒト悪性黒色腫細胞株:ヒト悪性黒色腫のリンパ節転移巣由来の細胞株。

詳細

九州大学プレスリリースをご参照ください。

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