薄膜電子デバイスの自律的な組み替えを可能にするドッキング機構
システム情報科学研究院
佐々文洋 准教授
ポイント
・薄膜電子デバイス(※1)は、軽く柔らかい一方で、部品の交換や機能追加が難しいという課題がありました。
・これまで進めてきた「動く薄膜電子デバイス」技術を基盤に、自ら接続・切り離しできる機械・電気一体型ドッキング(※2)機構を開発しました。
・将来、センサーやグリッパーなどを自身で交換できる薄膜ロボットや、組み替え可能なウェアラブルデバイスへの応用が期待されます。
概要
スマートフォン、ウェアラブルセンサー、医療用デバイスなど、電子デバイスはますます薄く、軽く、柔らかくなっています。一方で、薄膜電子デバイスでは、必要に応じて部品を交換したり、別の機能を持つモジュールを接続したりすることが難しいという課題がありました。
九州大学大学院システム情報科学研究院の佐々文洋准教授、大学院システム情報科学府修士課程の内間駿介氏(研究当時。現キオクシア株式会社)らの研究グループは、電子回路を備えた薄膜電子デバイスがロボットのように動き、自ら接続・切り離しできるドッキング機構を開発しました。
研究グループはこれまで、動く構造と電気回路を薄いフィルム上に一体化する「Kinetic Electronics(※3)」という技術を進めてきました。今回の研究では、この技術を基盤として、薄膜電子デバイス同士を機械的にも電気的にも接続し、必要に応じて切り離せる仕組みを新たに開発しました。
電気を流すとフィルムが曲がり、別のフィルム状モジュールをつかみます。接続後は、電源を切ってもつながった状態を保つことができます。さらに、接続部分を通じて電気を送り、相手側の薄膜モジュールを動かすことにも成功しました。
開発した機構は5〜12 Vで動作しました。分離型モジュールでは平均0.43 Wで接続動作を行い、最大618 mgf、すなわち6.1 mNの保持力を示しました。これは、同程度の大きさ・重さの薄膜機能モジュールを支えるための基礎的な性能を示すものです。
今回の成果は、薄膜電子デバイスを「作って終わり」の一体型デバイスから、必要な機能を後から組み替えられるモジュール型デバイスへ発展させるための基盤技術です。将来的には、薄膜ロボット、ウェアラブルセンサー、医療・バイオ計測用の柔らかいデバイスなどへの応用が期待されます。
本研究成果は、国際学術誌「npj Flexible Electronics」に2026年7月17日(金)(現地時間)に掲載されました。
研究者からひとこと
電子回路は、普通は「動かないもの」と考えられています。私たちはこれまで、電子回路を備えたフィルム自体が動く技術を進めてきました。今回の研究では、そのフィルムが相手をつかみ、電気を渡し、また離れる仕組みを実現しました。将来は、センサーやロボット部品を状況に応じて組み替えられる、生き物のような電子システムにつなげたいと考えています。(佐々文洋)
用語解説
(※1)薄膜電子デバイス
…薄いフィルムの上に電子回路やセンサーなどを作り込んだデバイス。軽く、曲げやすく、肌や柔らかい物体に沿わせやすいという特徴がある。
(※2)機械・電気一体型ドッキング
…物理的に部品同士をつなぐだけでなく、同時に電気も流れるようにする接続方式。本研究では、薄膜電子デバイス自身の変形によってこの接続を形成する。
(※3)Kinetic Electronics
…動く構造と電気回路を薄いフィルム上に一体化する技術。研究グループがこれまで進めてきた技術であり、本研究ではこれを基盤として、薄膜電子デバイス同士を接続・切り離しする機構を開発した。
(※4)アクチュエータ
…電気や熱などのエネルギーを、曲げる、伸びる、動くといった機械的な動きに変換する部品。
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