スマホアプリとAIで街中のごみ量を可視化

応用力学研究所
磯辺 篤彦 教授

参加型プラごみ量可視化プロジェクト

ポイント

・海洋プラスチック汚染の源の多く(8割程度)を占める生活ごみの削減に向けた対策を策定する上で、汚染源である街中のどこが、どの程度、どのようなごみで汚染されているかを可視化することが非常に重要です。
・ごみ拾いSNS「ピリカ」と、深層学習に基づく画像解析AIにより、街中のごみ量を種類ごとに可視化するシステムを開発しました。
・一般の方々がスマホアプリを通じてデータ収集に参加することで、我々のシステムが各地域に特化したものに発展していくことが期待されます。

概要

 海洋プラスチック汚染の源の多く(8割程度)は、街に流出した生活ごみといわれています(Morales-Caselles et al., 2022)。特に河川が近くにあるような海岸では、多くの生活ごみが海岸に漂着するという事実も存在します。このような場合、その削減に向けた対策を策定する上で、汚染源である街中のどこが、どの程度、どのようなごみで汚染されているかを可視化することが非常に重要です。
 鹿児島大学大学院理工学研究科の加古真一郎教授と博士前期課程1年の室屋龍之介氏、海洋研究開発機構の松岡大祐グループリーダー、そして九州大学応用力学研究所の磯辺篤彦教授らのグループは、株式会社ピリカ(東京都渋谷区、代表取締役 小嶌不二夫) が開発したごみ拾いSNS「ピリカ」と、深層学習に基づく画像解析AIにより、街中のごみ量を種類ごとに可視化するシステムを開発しました。
 本研究で開発したシステムは、これを、スマートフォンアプリと深層学習の組み合わせで実現します。この街中ごみの可視化により、汚染の源となっている品目や場所を特定し、優先順位を付した汚染対策の立案に寄与することが可能になります。また、これまでは街で清掃活動を実施したとしても、それが街の継続的な美化にどの程度寄与しているかを知る術がありませんでした。本技術により、ある特定の区域を定期的に観測するシステムを確立できれば、清掃効果がその後のごみ増加量にどの程度寄与しているかを可視化することができます(例えば、割れ窓理論によるごみ増加の抑制の有無など)。同様に、このような定期的な観測結果に基づいて、例えばある特定品目の排出抑制対策などを実施した場合、その対策の効果を地図上で可視化し、社会に向けて公開することも可能になります。これらの実現の鍵となるのが市民科学です。一般の方々がスマホアプリを通じてデータ収集に参加することで、我々のシステムが各地域に特化したものに発展していくことが期待されます。
 本研究の成果は、エルゼビア社が出版する国際学術論文誌「Waste Management」に掲載されました。

研究に関するお問合せ先

応用力学研究所 磯辺 篤彦 教授

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