ナトリウムMRIを用いた非侵襲的脳腫瘍評価

星細胞腫(IDH変異型)を検出する新たな方法を世界で初めて開発

医学研究院
山下孝二 准教授

ポイント

・今までのMRIは水素原子からの信号を画像にしていましたが、最近になり、組織のナトリウム量を可視化するための臨床用MRI機器が開発されました。
・臨床用のナトリウムMRIを用いることで、従来のMRIでは得られにくかった代謝やイオン動態に関する情報を画像として可視化できることを世界で初めて報告しました。
・将来的には、組織内におけるナトリウム代謝の変化を可視化することで、脳腫瘍の評価にとどまらず、脳血管障害の評価および関節軟骨の変性評価や腎疾患の早期発見などへの応用が期待されています。

概要

 現在、脳腫瘍の治療方針を決定するためには、手術や生検で組織を採取する必要があることが多く、患者さんの身体的負担が課題となっています。ナトリウムMRIは、体の中に含まれるナトリウムの分布を画像として捉える検査法で、腫瘍の細胞の状態や働きを反映すると考えられています。
 九州大学大学院医学研究院臨床放射線科学分野の石神康生教授、分子イメージング・診断学講座の山下孝二准教授、脳神経外科学分野の吉本幸司教授、および株式会社フィリップス・ジャパン プレシジョンダイアグノシス事業部の小原真シニアMRクリニカルサイエンティストらの研究グループは、ナトリウムMRIを用いた解析を行い、IDH変異という遺伝子異常を持つ星細胞腫において、通常のMRIとは異なる特徴的なナトリウムの信号変化がみられることを明らかにしました。これにより、将来的には、手術を行う前に脳腫瘍の性質をより詳しく把握し、治療方針を早い段階で決定できる可能性が示されました。本研究成果は、患者さんの負担軽減や、より適切な治療選択につながる新たな診断法の開発に貢献することが期待されます。
 本研究成果は、国際学術雑誌「Radiology」に2026年5月13日(水)(日本時間)に掲載されました。

研究者からひとこと

ナトリウムMRIの臨床応用はまだ始まったばかりですが、大きな可能性を秘めています。撮像時間が長いという課題がありますが、現在、人工知能を活用した撮像時間の大幅な短縮に取り組んでいます。将来的には、脳腫瘍の悪性度評価以外に、脳血管障害や変性疾患の診断など、臨床現場での幅広い実用化を目指していきます。(山下孝二)

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