分泌タンパク質生合成過程の異常を鋭敏かつ簡便に検出する新しいツールの開発

-ヒトタンパク質の生合成過程の解析や創薬への応用が期待-

生体防御医学研究所
稲葉 謙次 教授

ポイント

・ホタルルシフェラーゼを改変し、小胞体におけるタンパク質の生合成過程の異常を感知する新しいツールを開発。
・タンパク質の輸送と折り畳みの過程での異常を鋭敏かつ簡便に検知。
・ウイルス感染を抑制する化合物の探索への応用に期待。

概要

 東京科学大学(Science Tokyo)総合研究院 細胞制御工学研究センターの門倉広特任准教授、田口英樹教授、大阪大学の柳谷耕太准教授、兵庫県立大学の河野憲二特任教授、九州大学の天貝佑太助教、稲葉謙次教授らのグループは、ヒト分泌タンパク質が作られる過程の異常を鋭敏かつ簡便に検出することができる新しいツールを開発することに成功しました。
分泌タンパク質は細胞の表面や細胞外に存在し、健康維持に重要な働きをしています。細胞の全タンパク質の約30%を占める分泌タンパク質が正しい立体構造に折り畳まれるためには、タンパク質が小胞体へと運ばれた後、正しい位置にジスルフィド結合が導入される必要があります。これらの過程に問題があると、分泌タンパク質は正しい立体構造に折り畳まれず、糖尿病や高脂血症などさまざまな疾患の原因になるため、この過程を理解することは重要です。
本研究では、ルシフェラーゼというホタルの酵素を利用して、そうした分泌タンパク質の生合成過程での異常を検出する鋭敏で簡便なツールの開発に成功しました。このツールでは、分泌タンパク質が小胞体へと輸送される過程と、小胞体内で分泌タンパク質にジスルフィド結合が導入される過程のいずれかに生じた異常を、ホタルルシフェラーゼの活性の変化として検出できます。
本ツールを利用することで、ヒトタンパク質が小胞体で作られる過程に関わる因子の解析や、ウイルス感染を抑制する薬の創薬の効率化が期待されます。

本研究成果は、米国Cell Pressが発行するオンライン総合誌「iScience」に11月15日付(現地時間)で正式版が掲載されました。

本件の詳細はこちらをご参照ください。

お問い合わせ先

生体防御医学研究所 稲葉 謙次 教授
生体防御医学研究所 天貝 佑太 助教

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