三畳紀の地層から宇宙塵の降下量変動を初めて復元
理学研究院
尾上哲治 教授
ポイント
・三畳紀(※1)の地球(約2億4600万年前から2億1200万年前)に降り積もった宇宙塵(※2)の降下量変動を初めて復元
・数百万年スケールの長期変動と、マニクアガン天体衝突に対応する短期的増加を識別
・宇宙塵の流入が、地球環境に与える影響を解明する新たな手がかりを提示
概要
宇宙から地球へは、微小な塵(宇宙塵)が絶えず降り注いでいます。この宇宙塵は、太陽風に由来するヘリウムの同位体(特に質量数3の3He)を多く含むことから、地球への降下量の変化を、地層中のヘリウム同位体(※3)分析から復元することができます。しかし、こうした研究は主に過去1億年程度に限られており、それ以前の宇宙塵の降下量についてはほとんど分かっていませんでした。
九州大学大学院理学研究院の尾上哲治教授、東京大学大気海洋研究所の高畑直人助教らの研究グループは、日本のジュラ紀付加体(※4)に含まれる三畳紀のチャートを用いて、約2億4600万年前から2億1200万年前にかけての宇宙塵の降下量変動を初めて明らかにしました。その結果、数百万年スケールの長期的な変動と、約2億1600万前から2億1500万年前に起こった短期的な増加が確認されました。この短期的な増加は、小惑星の破砕によって生じた可能性があり、カナダのマニクアガン天体衝突との関連も示唆されます。
本研究は、太陽系から地球への物質供給の関係を理解する上で重要な成果であり、これまで見落とされてきた宇宙物質流入による地球環境の長期変動を考える新たな手がかりを提供します。
本研究成果は、日本学士院紀要(Proceedings of the Japan Academy, Ser. B)に2026年5月11日(月)に掲載されました。
研究者からひとこと
宇宙から降る微細な塵(宇宙塵)は、太陽系で起こった大規模なイベントを記録しています。日本の層状チャートという地層から、その記録を高精度で復元できたことは大きな成果です。今後は、さらに広い時代にこの手法を適用していき、太陽系の歴史を明らかにする研究を進めていきたいと考えています。 (尾上哲治)
用語解説
(※1) 三畳紀
約2億5190万年前から2億130万年前の時代(紀)のこと。この時代の特徴として、恐竜や哺乳類の出現があげられる。
(※2) 宇宙塵
宇宙空間に存在する大きさ1 mm以下の固体微粒子を宇宙塵とよぶ。地球には現在、年間16,000トンもの宇宙塵が流入してきていると見積もられており、それらは過去の地球においても定常的に降下していたと考えられる。惑星間空間における宇宙塵の発生源については、短周期彗星の放出や小惑星帯での小惑星同士の衝突による放出が考えられている。
(※3) ヘリウム同位体
ヘリウムには質量の異なる2つの同位体(³Heと⁴He)があり、それぞれ起源が異なる。³Heは主に太陽風に由来して宇宙塵に取り込まれるため、宇宙からの物質の流入を調べる手がかりとして利用される。
(※4) ジュラ紀付加体
付加体とは、海洋プレートの沈み込みに伴い、海底の堆積物や岩石がはぎ取られて大陸側に付け加わってできた地質体のこと。日本列島にはジュラ紀(約2億130万年前から1億4500万年前)に形成された付加体が広く分布している。
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