1種類の触媒で4種類の有機反応を自在に切替

-全てが偶然の発見(セレンディピティ)-

カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所
前田 修孝 准教授

概要

理化学研究所(理研)環境資源科学研究センターグリーンナノ触媒研究チームの山田陽一チームディレクター、アブヒジト・セン研究員、分子構造解析ユニットの村中厚哉専任研究員、九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I2CNER)の前田修孝准教授らの共同研究グループは、1種類の触媒を用いて同じ反応基質と反応試薬との反応で4種類の全く異なる有機反応を選択的に実現する「四重スイッチング触媒反応系」の開発に成功しました。

これは、さまざまな条件を全て検討したところ思いがけず見つけたセレンディピティ(偶然の発見)的成果であり、有機合成プロセスの多機能化、創薬化学の大幅な効率化に新しい可能性を開くものです。

反応の切替えは、添加剤(アミン類:窒素を持つ化合物)や反応温度といったごく小さな条件変更のみで達成されました。触媒にはシリコンナノワイヤーアレイ(SiNA)[1]にパラジウム(Pd)を固定化したSiNA-Pdを用い、触媒量はわずか65mol ppm(原料1molに対して65ppm、0.0065mol%)でしたが、反応物の高い収率と触媒の再利用性を示し、金属残渣(ざんさ)も医薬品基準を満たしました。

さらに本研究では、マイクロ波[2]照射において磁場成分が触媒活性化に不可欠であること、変調励起赤外分光法(ME-IR)と位相敏感検出法[3]により、マイクロ波の磁場成分が触媒のシリコンナノワイヤー構造を動的に活性化していることを確認しました。これはマイクロ波化学の原理解明という点でも大きな前進です。

本研究は、科学雑誌『ACS Catalysis』オンライン版(2月5日付)に掲載されました。

補足説明

[1] シリコンナノワイヤーアレイ(SiNA)
シリコン表面の上に太さが数十~数百ナノメートル(nm、1nmは10億分の1メートル)、高さ数マイクロメートル(µm、1µmは100万分の1メートル)のシリコンワイヤーが多数のブラシのように生えた基板。

[2] マイクロ波
光子の振動が成す電磁波の一種。光子の波長が400~700nmのものを可視光線、800nm付近を赤外線、そして数cmのものをマイクロ波と呼ぶ。電子レンジから発生するマイクロ波の波長は約12cm(周波数2.45GHz)である。

[3] 変調励起赤外分光法(ME-IR)と位相敏感検出法
変調励起赤外分光法は、赤外測定中にガスや電圧などの条件を周期的に変化させ、その周期に同期して変化する吸着種のシグナルだけを抽出する手法。さらに位相敏感検出法によりバックグラウンドをほぼ除去でき、反応中に一瞬だけ現れる活性種を高感度で検出できる。

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カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所 前田修孝 准教授

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