~ 数理モデルに基づく効果的な感染症対策の確立へ重要な一歩 ~
ポイント
・新型コロナウイルス感染によるクラスター(注1)の発生確率の計算に成功した
・抗原検査(注2)による感染者スクリーニングは、クラスターの発生確率を大幅に下げられる
・抗原検査による感染者スクリーニングのみでは、クラスターの発生確率を0%にできない
概要
国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院理学研究科の岩見 真吾 教授らの研究グループは、オックスフォード大学(イギリス)との共同研究で、新型コロナウイルス感染によるクラスターの発生確率の計算に世界ではじめて成功しました。この画期的な方法により、感染者ごとに異なるウイルス量の時間変化を分析し、抗原検査や抗ウイルス薬剤による治療の個別介入を行うことで、クラスターの発生確率に及ぼす影響を評価することが可能になりました。この手法によれば、抗原検査による感染者スクリーニングは、クラスターの発生確率を大幅に低減する効果がありますが、感染力の強い変異株(例: オミクロン株)によるクラスターを完全に防ぐことは難しいことが明らかになりました。
国内外での感染者数の再増加や新たな変異株の出現が懸念される中、今後の社会活動と感染症対策を両立させるためには、予防的な手段としての定期的な抗原検査やワクチンの追加接種キャンペーンなどの必要性が科学的に示唆されました。クラスター発生のリスクを最小限に抑える必要がある状況下で、本研究の成果は、数理モデルに基づく効果的な感染症対策の確立に向けた重要な一歩となることが期待されます。
本研究成果は、2023 年10 月2 日付国際学術雑誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」に掲載されました。
用語解説
注1)クラスター:小規模な集団感染、あるいはそれらによって形成された感染者の集団。
注2)抗原検査:ウイルスが持つ特有のタンパク質(抗原)を検出する方法。短時間で結果が出て、特別な検査機器を使わなくてもできる。
詳細
詳細はプレスリリースをご参照ください。