~⼤腸癌に対する新たな免疫チェックポイント阻害剤に向けた⼀歩~
ポイント
・⼤腸癌は主要な癌関連死の⼀つで、⼤腸癌に対する新たな治療⽅法が求められている。
・シングルセルRNA シーケンス(scRNA Seq)と空間的転写産物解析(VISIUM)とを統合解析する事によって⼤腸癌の増殖/浸潤/免疫抑制に関与する細胞を特定しクロストーク(情報交換機構)を解明した。
・本研究成果は、免疫チェックポイント阻害剤(ICB)を基盤とする免疫療法において、⼤腸癌に対するICB との併施等の開発に役⽴ち、⼤腸癌関連死の逓減に貢献する事が期待される。
概要
従来はバルクでのRNA シーケンスをする事しか出来なかったために1 細胞レベルでの⼤腸癌浸潤先進部での現象が分かっておらず、空間情報を有したまま⼤腸癌浸潤先進部のイベントの解明が望まれていました。
⼤腸癌浸潤先進部の⼤腸癌の増殖能・浸潤能・免疫寛容に関与する新たな仕組みを解明しました。九州⼤学別府病院外科の三森功⼠教授、九州⼤学⼤学院医学系学府博⼠課程4 年の⼤⾥祐樹、名古屋⼤学⼤学院医学系研究科システム⽣物学分野の島村徹平教授、⼩嶋泰弘前特任講師の研究グループは、Public のアジア⼈⼤腸癌患者(23 名)のシングルセルRNA シーケンス(scRNA Seq、後述参照)とアジア⼈⼤腸癌患者(1 名)の空間的転写産物解析(VISIUM、後述参照)を⽤いて統合解析を実施し、1細胞レベルで⼤腸癌の浸潤先進部での現象を明らかにしました。また、⼤腸癌検体20 例に対して免疫組織化学染⾊を施⾏する事によって再現性を確認しました。
マウスの⼤腸癌HLA-G ノックアウト細胞(※1)をマウスの⽪下に移植する事によって再現性を確認しました。
今回の発⾒は第2 の免疫チェックポイントといわれる悪性マクロファージを標的にした治療法の提案であり、⼤腸癌致死数逓減に繫がる新たな治療アプローチとなることが期待されます。
本研究成果は⽶国の雑誌「Cell Reports」に2023年1⽉17⽇に掲載されました。
用語解説
(※1) ⼤腸癌HLA-G ノックアウト細胞:HLA-G は正常組織では主に胎盤に発現し分泌され⺟体の免疫系から胎児を保護する役割を担っており成⼈の正常組織には発現を認めない。他⽅多くの癌でHLA-Gの発現を認め免疫逃避に関わっていると考えられている。本研究ではHLA-G 遺伝⼦に変異を加えて、HLA-G タンパクを作れないようにした⼤腸癌細胞を⽤いて実験を⾏った。
詳細
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