メタンをメタノールに効率よく変換する鉄錯体触媒を開発

~ ⽢味や⾎糖値をコントロールする物質の開発に期待 ~

ポイント

メタンを酸化してメタノールを得るための触媒として、新しい鉄錯体を開発しました。この錯体には、メタンを内部に捕捉することで効率よくメタンを酸化すると同時に、生成したメタノールの過剰酸化を防ぐ機能があります。これを用いて、水溶液中でのメタンからメタノールへの直接変換に成功しました。

概要

 メタン(注1)を酸化してメタノール(注2)を得ることを目指して、これまで多くの研究が行われてきました。しかしながら、メタンは最も酸化が困難な炭化水素であり、現在のところ、温和な条件下で、メタンをメタノールへ効率的かつ選択的に変換する手法は開発されていません。
 本研究では、自然界に存在する、メタンを酸化する金属酵素の構造と反応機構から着想を得て、活性点近傍に疎水性環境を有する鉄錯体を開発しました。この鉄錯体を触媒に用いたところ、安価で安全な酸化剤を利用した、メタンからメタノールへの高効率かつ高選択的な直接変換に成功しました。
 この反応では、水溶液中において50 ºC、約10気圧という温和な条件下で、メタンの酸化が進行します。触媒回転数は3時間で500回を超え、83%という高い選択性でメタノールを得ることができます。これだけの高効率と高選択性が得られるメカニズムとして、触媒の活性点である鉄原子近傍に疎水性環境があることで、この中にメタン(疎水性物質)を捕捉するとともに、生成したメタノール(親水性物質)が水溶液中に放出されるとともに、活性点に接近して過剰酸化が生じることを防ぐと考えられます。
 このような「キャッチ・アンド・リリース機構」は、メタンからメタノールへの変換のみならず、さまざまな疎水性有機化合物を水中で効率的に化学変換する際に応用できる、重要な指針になると期待されます。

用語解説

(注1) メタン(CH4)
メタンは最も単純な炭化水素化合物で、天然ガスの主成分として知られている。主な放出源として、湿地や水田、家畜、および天然ガスの生産やバイオマス燃焼が挙げられる。メタンの世界の平均濃度は毎年上昇傾向にあり、排出量を抑える取り組みが行われている。
(注2) メタノール(CH3OH)
メタノールは、メタンの酸化生成物の一つ。幅広い用途があり、化学物質の原料、ガソリンのような燃料、プラスチックなど、現在の化学産業に欠かすことのできない原料として用いられている。

詳細

詳細はプレスリリースをご参照ください。

【ラジオ出演】LOVE FM「スイッチオン! DAYTIME」に芸工の教員が出演

ゲノム編集の効率や安全性を100倍以上高める新技術を開発

関連記事

  1. 「ナイスステップな研究者」に平松光太郎准教授が選…

    ~「ナイスステップな研究者」に平松光太郎准教授が選ばれました~文部科…

  2. 【11/10開催】社会課題解決型ワークショップ「…

    新たな交通機関として注目されている空飛ぶクルマの社会実装・普及を事例として考…

  3. 第68回アジア・オセアニア研究教育機構(Q-AO…

    比較社会文化研究院 社会情報部門教授 益尾 知佐子九州大学アジア…

  4. 工学研究院の安達千波矢主幹教授・馬奈木俊介主幹教…

    〜工学研究院の安達千波矢主幹教授と馬奈木俊介主幹教授、生体防御医学研究所の増…

  5. 生体分子モーターによる群れ運動を操る幾何法則を解…

    ~分子の群れの交通ルールでミクロな世界の物流を操る~ 鳥や魚の群れ、…

  6. 【8/21開催】第153回アジア・オセアニア研究…

    佐伯 龍聖 助教(工学研究院 材料工学部門)九州大学アジア・オセアニ…

  7. 画像識別AIの誤識別リスクを効果的・効率的に低減…

    ~ 自動運転システムにおける安全性ベンチマークにて効果を検証 ~概要…

  8. 超高層大気分野のデータ駆動型科学を支えるウェブサ…

    ~登録データセット数1200超 すでに180以上の研究成果に貢献~概…