“百聞は一見に如かず” 動作する全固体電池内部を透かし見る

~ 全固体リチウム硫黄電池の実現へ、正極内部の反応前線形成を中性子オペランド計測で可視化 ~

ポイント

・硫⻩は豊富で⼤きな容量を持つ夢の活物質だが絶縁性
・実⽤化へ、性能制限因⼦の同定と劣化機構の解明が不可⽋
・中性⼦線を⽤いて全固体複合正極中のリチウム輸送現象を世界で初めて可視化
・複合体中のマクロなイオン輸送向上が性能向上のカギを握ることを明らかに

概要

 安価で豊富、⾼容量と三拍⼦そろった硫⻩を、⾼い安全性と蓄電性能が⾒込まれる全固体電池で利⽤する全固体リチウム硫⻩電池は、次々世代型蓄電デバイスの候補として注⽬されています。その実⽤化には、⾼速で充放電が可能な硫⻩正極が不可⽋であり、⾼い輸送性能を持つ固体硫⻩正極の実現へ、現在の輸送のボトルネックと劣化機構の同定、またそれに基づく設計指針の検討が望まれていました。
 九州⼤学⼯学研究院応⽤化学部⾨の⼤野真之助教は、Technische Universität Berlin のRobert Bradbury博⼠研究員、Tobias Arlt 博⼠研究員、Justus-Liebig-Universität Gießen のGeorg F. Dewald ⼤学院⽣(当時)、Jürgen Janek 教授、University of Münster のMarvin A. Kraft ⼤学院⽣(当時)、Wolfgang G. Zeier 教授、Helmholtz-Zentrum Berlin für Materialien und Energie (HZB)のNikolay Kardjilov 博⼠研究員、Ingo Manke グループリーダーと共同で、動作中の全固体硫⻩正極内部のリチウム輸送現象を、中性⼦線を⽤いて世界で初めて可視化しました。オペランド計測により放電中に固体電解質側から伝播する反応前線の形成が確認され、正極中のマクロなイオン輸送が極端に遅いことが明らかとなりました。さらに充電状態を変えながら内部の断層撮影を⾏い、集電体付近にリチウムが残存することで容量劣化が起こることを突き⽌めました。今回解明された性能制限因⼦の同定と劣化機構は、固体硫⻩正極の向上にはイオン輸送を犠牲にしないプロセス⼿法や輸送安定性のさらに⾼い固体電解質の開発、さらにはイオン供給能を⾼める正極構造の設計が必要となることを⽰唆しています。
 本研究はドイツ連邦教育研究省(BMBF:03XP0115A and 03XP0115C)とAlexander von Humboldt Foundation の⽀援を受けて⾏われました。なお、本研究成果は国際学術誌『Advanced Energy Materials』のオンライン速報版に、2023年3⽉20⽇(⽉)(⽇本時間)に掲載されました。

詳細

詳細は九州大学プレスリリースをご参照ください。

【メディア掲載】 「ピクトグラムとジェンダー」に関する記事が掲載されました(西日本新聞朝刊)

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