~世界初 ⾼容量・低コストな全固体電池の実現に前進~
ポイント
・全固体電池の製造は「異種材料間の反応回避」と「緻密に焼き固める」ことの両⽴が課題
・材料組成を改良する事で、汎⽤的なセラミックプロセス⽤いて低温焼結を実現し課題克服
・作製した全固体電池は、従来よりも優れたサイクル特性を有することを確認
概要
電気を貯蔵可能な⼆次電池には⾼容量・⾼い安全性が益々要求されています。近年では、酸化物固体電解質を⽤いた全固体電池が、有毒ガスを発⽣しない・⾼温で安定性を有することから注⽬されています。電解質には電池作動時にスムーズなイオン輸送が望まれるため、緻密に構成する必要があります。酸化物系においては、緻密化には⾼温焼結が必要になりますが、異種材料間で意図しない反応が起こり電池性能を低下させます。そのため、低温焼結可能な電解質材料が望まれていました。
九州⼤学⼤学院総合理⼯学府博⼠課程3年(兼 株式会社デンソー環境NS 開発部)の林 真⼤⽒、九州⼤学⼤学院総合理⼯学研究院の渡邉 賢准教授、島ノ江 憲剛教授らの研究グループは酸化物固体電解質の1 種であるLi₇La₃Zr₂O12(LLZ)において、焼結温度を750 ℃まで低温化(従来790 -1230℃)することに成功しました。実現には、焼結助剤とLLZ 中の添加元素間の反応で⽣成した液相とLLZ 粒⼦間で選択的に⽣成する液相の2つが重要な役割を果たすことを⾒出しました。開発した材料を⽤いて作製した電池は、40 サイクルに渡って充放電可能であり、既報のLLZ を⽤いた酸化物全固体電池より優れた容量維持率を⽰しました。汎⽤的なセラミックプロセスを⽤いて実現させたことにより、低コストで製造できることが期待されます。
今後、焼結温度を維持したままイオン輸送能⼒を上げることで⾼容量な電池実⽤化を⽬指します。
本研究成果は英国王⽴科学会誌「Journal of Materials Chemistry A」に2023 年1 ⽉6 ⽇に掲載されました。
詳細
詳細は九州大学プレスリリースをご参照ください。